日本大百科全書(ニッポニカ) 「モレスコット」の意味・わかりやすい解説
モレスコット
もれすこっと
Jacob Moleschott
(1822―1893)
オランダ生まれの自然科学者。ドイツ語読みでモレショットともよばれる。ハイデルベルク大学で医学を勉強、生理学と人間学に関する論文で教授資格をとるが、無神論者であることからハイデルベルクを追われ、1856年チューリヒ大学の生理学教授となる。その後、トリノ大学を経てローマ大学に移り、ローマで生涯を終えた。精神を中心とする従来の哲学傾向に反発、生の過程を機械論的化学的に説明し、また全現実を物質的素材に還元して、世界内のすべてのできごとを物質的素材の運動から説明した。モレスコットのこの機械論的唯物論は、ビュヒナーやフォークトの自然科学的唯物論とともに、当時のドイツの知識層に歓迎された。
[宇都宮芳明 2015年4月17日]