日本大百科全書(ニッポニカ) 「丁字染め」の意味・わかりやすい解説
丁字染め
ちょうじぞめ
チョウジはインドネシアのモルッカ諸島原産の熱帯常緑樹で、つぼみを乾燥したものが香料として古くから用いられ、花梗(かこう)からはちょうじ油が採取される。わが国では、平安時代に中国から輸入されたものが、香料または薬用として珍重された。
丁字染めは、その煎汁(せんじゅう)を用いて染めた茶色系の染め色で、香染めともいわれ、有職(ゆうそく)では帷子(かたびら)や単(ひとえ)、また袈裟(けさ)、扇の地紙なども染めたようである。鉄媒染の加減によって、濃香(こきこう)、黒味(くろみ)香など濃淡を染め分けることができるが、元来は、香りを布帛(ふはく)に移し染めるということで、媒染を行わずに用いたものであろう。江戸時代には材料の関係から、丁字染めといっても、楊梅皮(ももかわ)などを用いて染めたようである。
[山辺知行]