日本大百科全書(ニッポニカ) 「七王妃物語」の意味・わかりやすい解説
七王妃物語
しちおうひものがたり
Haft Paikar
ペルシアの詩人ニザーミーの叙事詩。原名は「七人像」を意味し、『バフラームの書』としても知られる。ササン朝皇帝バフラーム5世が王子時代、ある宮殿で目にした7人の美女の肖像画に魅惑され、即位後7人の美女を王妃に迎え、七色の御殿にそれぞれ住まわせる。曜日ごとに各宮殿を訪れると、各王妃が出身地にまつわる興味深い話を聞かせて皇帝を楽しませるという枠(わく)物語で構成されている。ペルシア文学作品のなかでももっとも官能的な作品として知られ、巧みな比喩(ひゆ)、隠喩が自在に駆使されている。それぞれの王妃が語る物語は怪奇と幻想に満ち、濃艶(のうえん)、絢爛(けんらん)を極める。この作品は中世以来ペルシア・ミニアチュールの絶好のテーマとしても名高い。
[黒柳恒男]
『黒柳恒男訳『七王妃物語』(1971・平凡社)』