日本大百科全書(ニッポニカ) 「三一致の法則」の意味・わかりやすい解説
三一致の法則
さんいっちのほうそく
règles de trois unités フランス語
演劇用語。「三統一の規則」または「三単一の法則」ともいわれる。戯曲は24時間以内の、一つの場所で起こる、筋が一つの物語を扱わねばならないとするものである。ルネサンス期のイタリアやフランスの演劇学者がアリストテレスの『詩学』の一節を曲解したものであるが、とくにフランスにおいて、ボアローにより法則化され、フランス古典主義演劇の作劇原則としてコルネイユ、ラシーヌ、モリエールらに多大な影響を及ぼした。これは当時のただおもしろさをねらった荒唐無稽(こうとうむけい)なメロドラマに対立して、良識を重んずる貴族の教養と趣味を代表する演劇をつくるのに役割を果たした。
今日では、こうした法則にとらわれることなく作劇するのが一般であるが、散漫にならぬよう緊密な構成を意図すればおのずと三単一性に近づくことは事実であり、単なる一時代の趣味とばかりいえない面がある。現に、イプセンのいくつかの作品は、内的必然によるものであるが、三単一性をもっている。
[高師昭南]