改訂新版 世界大百科事典 「三神一体」の意味・わかりやすい解説
三神一体 (さんしんいったい)
trimūrti[サンスクリツト]
ヒンドゥー教の教理のひとつで,ブラフマー神(梵天)とビシュヌ神とシバ神は,実は同一神,ないし宇宙の最高原理の別名にほかならないということを意味する。大叙事詩《マハーバーラタ》の補遺としての性格をもつ《ハリバンシャ》に,すでに,ビシュヌ神とシバ神は同一であるとの見方が説かれているが,プラーナ文献にいたって,ブラフマー神を加えた三神が同一であることが表明されるようになった。つまり,宇宙の最高原理が,ブラフマー神として世界を創造し,ビシュヌ神としてそれを維持し,シバ神としてそれを破壊する,というのである。マントラ(真言)の冒頭に唱えられる聖音オームomは,しばしばa,u,mの合したものとされるが,タントリズムでは,しばしば,aはブラフマー神,uはビシュヌ神,mはシバ神のことであるとされた。
→阿字観
執筆者:宮元 啓一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報