六訂版 家庭医学大全科 「上腕骨顆上骨折」の解説
上腕骨顆上骨折
じょうわんこつかじょうこっせつ
Humeral supracondylar fracture
(運動器系の病気(外傷を含む))
どんな外傷か
小児に最も多い骨折のひとつで、肘周辺の骨折の60%を占めます。幼稚園児と小学生に多く、男女比は2対1です。鉄棒やうんていなどから転倒して肘を伸ばした状態で手をついた時に、外力が肘まで伝わって発生します。
見落としやすい外傷と合併損傷
骨折のずれが大きい場合には合併損傷が起こりやすくなります。骨折部で正中神経、
また、非常にはれが強い時にギプスや包帯がきついと、はれの逃げ場所がなくなって、骨と厚い骨間膜や筋膜に囲まれた
この状態が6時間以上続くと、区画内の神経麻痺と筋肉の
また、骨片のずれの整復が不良だと、
症状の現れ方
肘のはれ、痛み、皮下出血、骨折部の異常な動きが現れます。神経や血管に合併損傷があると手首の脈拍が弱くなり、手や指のしびれ感、異常感覚、運動障害が起こり、色調が蒼白や暗青紫色になります。
検査と診断
骨折型を確定するためにX線写真が必要です。ずれが大きい場合には筋肉の断裂の有無などもX線写真で読みとります。骨折型により治療が変わるので、正確な骨折型の診断が必要です。
治療の方法
ウイルキンス分類の1型は転位(ずれ)がみられないので、そのままギプス固定を行います。2型は後方に転位するが骨折面の一部は接触しているので、徒手整復を行ってギプス固定します。3型は後方に転位し骨折面同士の接触はまったくみられません。この3型に合併損傷や後遺変形が起こりやすくなります。
神経や血管に合併損傷のある場合には、手術により骨片に引っかかっている神経や血管をていねいに外して、骨片を整復して金属鋼線で固定します。合併損傷のない場合には4通りの方法があり、適宜使い分けます。
1番目は徒手整復してギプス固定、2番目は徒手整復してベッドに寝かせて腕を吊り上げる
暴力的に徒手整復を行ったりギプスがきついと急性前腕屈筋区画症候群になりやすく、発生したら6時間以内に早急に筋膜切開という手術が必要になります。さらに、暴力的な徒手整復では
徒手整復が難しい時は無理に行わず、手術に切り替えることが重要です。固定期間は低年齢ほど短く、幼稚園児では3週間、小学生では4週間程度です。
応急処置はどうするか
上腕から手まで、肘を90度にして副木固定を行います。厚めの段ボール紙で代用できます。
関連項目
鈴木 克侍
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報