上顎前突(読み)じょうがくぜんとつ(英語表記)Maxillary protrusion

六訂版 家庭医学大全科 「上顎前突」の解説

上顎前突
じょうがくぜんとつ
Maxillary protrusion
(歯と歯肉の病気)

どんな病気か

 上の前歯が下の前歯より過剰に前方に出ている状態をいいます。上あごの過度な前方への成長や下あごの不十分な成長による骨格性のものと、上の前歯が前方に傾いて生じる歯性のものに分類されます(図8図9)。

原因は何か

 遺伝、または指しゃぶりなどの悪い癖が長期に続いた時や、鼻づまりなどによっていつも口をぽかんと開けていることなど後天的なことが誘因になる場合もあります。

症状の現れ方

 前歯で物を噛みづらい、口を閉じにくくうまく発音しづらいといった症状や、上の前歯に外傷を受けやすくなる危険性があります。また、外観上の問題から心理面に悪影響を及ぼすこともあります。

治療の方法

 あごの成長が旺盛な混合歯列期では、上あごと下あごの前後のずれがある場合、上あごの成長を抑制するヘッドギアー(図10)や、下あごの成長を促進させる機能的矯正装置を用いて治療します。

 あごの成長がほぼ終了した永久歯列期では、マルチブラケット装置を用いて治療し、必要に応じて歯を抜いたり、上あごの歯を後ろに動かすためにヘッドギアーを併用したりする場合もあります。近年、ヘッドギアーのかわりにインプラントを使うこともあります(図11)。上下のあごのずれが大きい場合は、外科手術を伴う矯正歯科治療が行われることもあります。


出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「上顎前突」の意味・わかりやすい解説

上顎前突
じょうがくぜんとつ

上顎正常位置より前方に突き出ている状態をいい、不正咬合(こうごう)の一つ。側面から見ると凸型顔貌(がんぼう)を示す。上顎前突には、前歯のみが前突しているものと、上顎骨自体が前に突き出ているものとがある。原因としては、遺伝による場合のほか、指しゃぶりや弄舌癖(ろうぜつへき)(舌を上下歯牙(しが)の間に挿入しているような習癖)、口呼吸などがあげられる。

[市丸展子]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内の上顎前突の言及

【反歯】より

…上下の前歯の前後的なすきまが7~8mm以上あるようなかみ合せの不正状態をいう。歯科学用語では上顎前突upper protrusionと称し,その成因から5類に分けられる。(1)上顎の前歯が正常より前方に位置していたり,前方に傾斜している場合 顔貌上の特徴は,上顎の前突感が著しい。…

※「上顎前突」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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