不足払い制度(読み)ふそくばらいせいど

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「不足払い制度」の意味・わかりやすい解説

不足払い制度
ふそくばらいせいど

生産者保護のために政府が基準価格を決め,市場価格が基準を下回った場合にその不足分だけを生産者に支払う価格補償方式をいう。最初ヨーロッパ諸国で採択された制度で,ヨーロッパの大豆,アメリカの小麦トウモロコシなどに設定されている。日本でも大豆,菜種,酪農振興のために加工原料乳に対して採用されている。農産物価格政策としては比較的新しく,また市場価格にあまり影響させずに生産者の所得保障が可能である。たとえば,牛乳は計画生産上,用途により飲用牛乳,原料加工乳に大別され,価格は原料加工乳のほうが一般に低い。このため加工向け生乳価格では農家の牛乳生産費をまかなえないので,政府が農家の平均生産費に相当する保障価格と乳製品の市場実勢価格から標準的な加工,販売経費を差し引いた基準取引価格とを設定し,その差額を補給金として乳業会社の支払う価格に追加して生産農家に支払っている。財源は政府の補助金と乳製品輸入による差益金で,中央段階の事業を引き受けているのが農畜産業振興機構である。また,牛肉の輸入自由化を前に,1990年には肉用子牛にも適用された。

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