日本大百科全書(ニッポニカ) 「農畜産業振興機構」の意味・わかりやすい解説
農畜産業振興機構
のうちくさんぎょうしんこうきこう
畜産物、野菜、砂糖など農畜産物の国内生産者を保護するため補助事業や価格安定事業等を行う独立行政法人。独立行政法人農畜産業振興機構法(平成14年法律第126号)に基づき、2003年(平成15)に発足した。英語名はAgriculture and Livestock Industries Corporation、略称はalic(エーリック)。主務官庁は農林水産省。本部を東京都港区麻布台(あざぶだい)に置き、札幌、鹿児島、那覇に地方事務所をもつ。トップは理事長職で、代々ほとんどが農水省出身の元官僚である。行政改革の一環として特殊法人の「畜産振興事業団」と「蚕糸砂糖類価格安定事業団」が1996年(平成8)に統合して農畜産業振興事業団となり、さらに2003年に認可法人の「野菜供給安定基金」を統合して、現在の農畜産業振興機構となった。
主要業務として、(1)牛肉、豚肉、乳製品、野菜、砂糖、デンプンなどについて輸入製品の買入れなどで需給を調整して国内価格の安定を図る、(2)野菜価格が下落した場合に国内生産者に補給金や交付金を支給する、(3)国内サトウキビ生産者や国産イモを原料とするデンプン製造業者に交付金を支給する、(4)口蹄疫(こうていえき)や鳥インフルエンザなど家畜の伝染病流行時に、国内生産者への緊急支援を行う、などを実施し、国内生産者の経営安定に取り組んでいる。また野菜や畜産物などの市場価格の調査や、食育の啓蒙(けいもう)なども行っている。事業目的に国民消費生活の安定を掲げているものの、バターの輸入事業を独占的に行いながら国内でのバター不足を招いたり、政府のBSE(牛海綿状脳症)対策事業開始以降、数回にわたり輸入牛肉割当て量を水増しする牛肉偽装事件が起きたりしている。
2015年3月末時点での資本金は309億5900万円、職員数は208人。
[矢野 武 2016年8月19日]