両剣論(読み)りょうけんろん(その他表記)Two swords

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「両剣論」の意味・わかりやすい解説

両剣論
りょうけんろん
Two swords

中世における教会と国家の権力の関係についての教説。『ルカによる福音書』 22章 38の象徴的解釈に由来する。両剣論は教皇ゲラシウス1世により初めて表明され,『グラティアヌス法令集』に記載されている。教皇ボニファチウス8世はフィリップ4世との争いにおいて教書ウナム・サンクタム」を発布,教会は両権力を神から受けており,国家権力国王皇帝に貸してあるのみで,教会のために用いられるべきものであるとした。他方皇帝側の両剣論は国家権力は神から直接皇帝に与えられているとする。グラティアヌスは精神的権力のみを教会に認めている。近世以後,主権在民,公会議主義により両剣論は力を失った。

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世界大百科事典(旧版)内の両剣論の言及

【キリスト教】より

…この間,教会法はグラティアヌスのようなすぐれた学者をえて発達した。 教皇ボニファティウス8世(在位1294‐1303)が1302年に与えた教書《ウナム・サンクタム》は,教皇がキリストの代理者として霊界と俗界の二つの剣をもつこと,すなわち,後者を行使するのは王と騎士であっても,命令を下すのは教皇の側にあることを主張し,こうして〈すべての人間は霊魂の救いをまっとうすべくローマ教皇に服従すべきである〉と宣言した(両剣論)。もちろん,二つの剣は真っ向からぶつかるのではなく,世俗の権威もまた創造者たる神によって与えられているゆえに矛盾はないと考えているが,けっきょく教皇が失敗して世俗の権威を放棄せざるをえなくなるまで,教皇は世俗のことに介入しすぎたのである。…

※「両剣論」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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