並木正三一代噺(読み)なみきしょうぞういちだいばなし

改訂新版 世界大百科事典 「並木正三一代噺」の意味・わかりやすい解説

並木正三一代噺 (なみきしょうぞういちだいばなし)

歌舞伎作者の伝記。1773年(安永2)に没した初世並木正三の一生を,作品と評判を中心に記述した伝記。正三の十三回忌に当たる1785年(天明5)刊。題簽は〈並木正三一代噺〉,内題は〈並木正三狂言攫(ざらえ)〉。作者は従来並木五瓶とされてきたが,2世並木千柳(翁輔)と判明した。序文を書いた入我園主人に関しては不詳。正三の初作《鍛冶屋娘手追噂》から絶筆《日本第一和布刈神事》まで約80編の作品名の年代的羅列が主で,人物についての考察に欠けるが,作者としての動向やエピソード,大道具趣向などについても述べられている。江戸時代の歌舞伎作者の一代記としては唯一の書である。巻頭の〈並木正三の像〉は貴重な肖像である。《日本庶民文化史料集成》第6巻に翻刻所収。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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