下野国の中・近世の宿駅。現栃木県佐野市街の南西部分。天命とも書いた。特産物の天明鋳物は古くから知られ,〈東山時代,関東の天明釜をもって良とす〉(《和漢三才図会》)と,西の芦屋釜に対して高い評価をうけている。天明鋳物では湯釜,梵鐘,鰐口が名高く,現存最古の天明鋳物は元亨元年(1321)銘の梵鐘(安房日本寺)である。天明鋳物師(いもじ)が文献上明らかとなるのは15世紀に入ってからで,座的組織をもって活動していた。その行動範囲は,下野はもとより関東一帯に及び,さらに畿内にまで広がり,15世紀中ごろには和泉・河内の鍬鉄鋳物師の営業権を脅かすほどにもなっていた。天正10年(1582)8月18日付の天明鋳物師にかかわる正親町天皇女房奉書写が真継文書にあり,戦国末期には天明の鋳物師が真継家と関係をもっていたことは確実であろう。
執筆者:佐藤 和彦 中世以来の当地の豪族佐野氏は,豊臣秀吉の関東制圧後も旧領を安堵されたが,徳川家康は1602年(慶長7)唐沢山城から春日岡への移転を命じた。鋳物師の職人集落は春日岡山の佐野城の建設によって,その城下の一端にくり入れられた。しかし佐野信吉が14年に改易になり,城下町は宿場と職人町に転換していった。17年(元和3)日光山に家康の廟が造られるとき,改葬される遺骸は館林から天明を通り,栃木,鹿沼(かぬま)を経て日光へ入った。その後,隣接の小屋町(現在の佐野市街の中心部)を合わせて天明宿とし,46年(正保3)朝廷から日光廟(東照宮)へ毎年奉幣使が遣わされるようになって,日光例幣使街道の宿場として重視された。例幣使は4月12日に小屋町の本陣に宿泊するのが通例であった。日光例幣使街道は,1764年(明和1)に幕府道中奉行の管轄になり,66年に定助郷(じようすけごう)制が定められるが,天明宿は東隣の犬伏(いぬぶし)宿(犬伏,堀米2町)との距離が7kmほどで近いため,伝馬の継立ては両宿で1宿の扱いを受け,助郷村も両宿合わせて定められた。天保年間(1830-44)には小屋町を合わせて1095軒の大きな町であるが,本陣・問屋のほか,旅籠屋(はたごや)は8軒である。
執筆者:河内 八郎
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熊本県中部、飽託(ほうたく)郡にあった旧町名(天明町(まち))。現在は熊本市の南西部を占める地域。1956年(昭和31)中緑(なかみどり)、銭塘(ぜんども)、内田、奥古閑(おくこが)、海路口(うじぐち)、川口の6村が合併して天明村を設置。1971年町制施行。1991年(平成3)熊本市に編入。旧町名は、天明年間(1781~1789)に開削され、町の大半を灌漑(かんがい)している天明新川(人工河川)にあやかった。旧町域は、すべて緑川の運んだ土砂の堆積(たいせき)地とその地先に造成された干拓地とからなる。堤防を除けば、海抜高度3メートル以上の所はなく、全面積の9割強が耕地で、そのほとんどが水田と施設園芸圃場(ほじょう)地(スイカ、メロン、ナス、トマト)である。また島原湾沿岸ではアサリ、ノリ、クルマエビなどの養殖も盛んで、季節には潮干狩の舞台にもなっている。中世の干拓地銭塘で師走(しわす)の初丑(はつうし)の日に行われた歳星宮(さいせいぐう)例祭は、干拓地造成当時に京都から下った公卿(くぎょう)一族の私祭が近世期に村落祭化したもので、「鍋墨塗り付け祭(なべずみぬりつけまつり)」としても知られている。
[山口守人]
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…35年,保田与重郎らの《日本浪曼派》に参加,《花筐(はながたみ)》《衰運》を発表,《夕張胡亭塾(ゆうばりこていじゆく)景観》(1935)は第2回芥川賞候補となる。以後,軍隊生活と満州,中国放浪の旅をつづけるが,44年《天明》で野間文芸奨励賞を受賞。戦後しばらく沈黙し,自己の従軍体験と亡妻遺児との生活体験を描いた《リツ子・その愛》《リツ子・その死》(ともに1950)で文壇に復帰。…
…下野国(栃木県)安蘇郡,日光例幣使街道の宿場。西側の天明(てんみよう)宿との距離が1里3町(約4.2km)で比較的近く,人馬継立ては2宿で1宿並みの扱いであった。1764年(明和1)この街道も道中奉行の管轄になり,不足の人馬の提供を常時求める定助郷(じようすけごう)村が定められた。…
※「天明」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
〘 名詞 〙 年の暮れに、その年の仕事を終えること。また、その日。《 季語・冬 》[初出の実例]「けふは大晦日(つごもり)一年中の仕事納(オサ)め」(出典:浄瑠璃・新版歌祭文(お染久松)(1780)油...
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