日本大百科全書(ニッポニカ) 「中殿御会図巻」の意味・わかりやすい解説
中殿御会図巻
ちゅうでんぎょかいずかん
絵巻。1巻。鎌倉初期の1218年(建保6)8月13日、秋月を賞して宮中清涼殿(せいりょうでん)で催された和歌管絃(かんげん)の宴の模様を描いたもの。この宴に列席した似絵(にせえ)の名手藤原信実(のぶざね)が描きとめた原本はすでに失われ、現在では室町時代(15世紀前半)の白描(はくびょう)模本(九条家伝来、現在出光(いでみつ)美術館蔵)がもっとも有名。宴に列座する順徳(じゅんとく)天皇をはじめ、右大臣道家以下公卿殿上人(くぎょうてんじょうびと)31人各人の面貌(めんぼう)が個性と表情を豊かに描き分けられ、鎌倉初期の似絵のおもかげを伝えている。絵のあとには「池月久明」の課題で詠まれた26人の歌26首が記される。
[村重 寧]
『小松茂美編『続日本絵巻大成18 中殿御会図他』(1983・中央公論社)』