改訂新版 世界大百科事典 「丸太小屋」の意味・わかりやすい解説
丸太小屋 (まるたごや)
log cabin
丸太を組み合わせて作る小屋で,開拓時代のアメリカでは開拓精神の象徴となった。新大陸にこれを伝えたのは,1638年ごろデラウェア川下流に植民したスウェーデン人であった。彼らの故郷の森林地帯の建築法で,伐採したばかりの丸太を横組みにして積み,屋根も丸太でふき,枘(ほぞ)の部分に(鉄釘がないため)木釘を打ち込み,すきまには泥や木屑などを詰めた。部屋は一つか二つだが,がんじょうで,保温がよく,やがてほかの国からの植民者もこれを採用,西部のフロンティアにもひろまった(ただし,森林のない大草原地帯では,芝土の家sod houseがつくられた)。丸太小屋はいつしか開拓精神の象徴になり,1840年の大統領選挙で,W.H.ハリソンは丸太小屋出身の庶民という(偽りの)イメージを売り込んで成功した。A.リンカンとJ.A.ガーフィールドは,実際に丸太小屋生れで,またそれを宣伝して当選した大統領である。〈丸太小屋からホワイト・ハウスへ〉という文句は,アメリカ・デモクラシーの神話を支える柱の一つにさえなった。
執筆者:亀井 俊介
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報