乗出(読み)のりだし

精選版 日本国語大辞典 「乗出」の意味・読み・例文・類語

のり‐だし【乗出】

〘名〙
① 乗って出発すること。また、大勢で勢いよく出発すること。
西洋道中膝栗毛(1874‐76)〈総生寛〉一四「サアぶらぶら乗出(ノリダ)しとしやうじゃアねいか」
馬場で馬を乗り出す所。馬場本(ばばもと)。うまだし。
武家元服の称。また、大名の長男が初めて登城し、将軍に面会すること。
※憲法類編‐二五・家督相続・明治元年(1868)一一月二八日・堂上諸侯中下大夫へ御沙汰(古事類苑・礼式九)「但、武家にては、従来乗り出しと唱候得共、今般、官武一途に被仰出候に付ては、総て元服と可相唱事」
④ 船がそのまま出帆して航海できるように艤装が完備していること。
※常名家文書‐売渡申一札之事(1846)「一、九百石積廻船壱艘 但乗出之儘 此代金七百九拾両也」
初潮をいう。
※雑俳・柳多留‐四〇(1807)「姫君の御乗出し十三四から」

のり‐だ・す【乗出】

[1] 〘自サ五(四)〙
① 乗ることをしはじめる。のりいだす。
乗物に乗って出発する。また、勢いよく出発する。くりだす。のりいだす。
滑稽本浮世風呂(1809‐13)四「てんと面白しで、サッサと乗出(ノリダ)したもんでごぜへましたが」
③ 進んで物事に関与する。積極的にその世界へはいっていく。
※都会の憂鬱(1923)〈佐藤春夫〉「いざ文壇に乗り出さうとして徐ろに試み初めたころには」
[2] 〘他サ五(四)〙
① 乗って船、馬などを進める。のりいだす。
唱歌われは海の子(文部省唱歌)(1910)「いで大船を乗出(ノリダ)して 我は拾はん海の富」
② からだを前へぐっと出す。また、膝を進めて前へ出る。のりいだす。
※葛飾砂子(1900)〈泉鏡花〉一一「『や、産声を挙げたわ、さあ、安産、安産』と嬉しさうに乗出して膝を叩く」

のり‐いだ・す【乗出】

[1] 〘自サ四〙 =のりだす(乗出)(一)
浮世草子・魂胆色遊懐男(1712)一「部屋からすぐにのり出し、とぶがごとくに、是さいはひと豆右衛門かごのうへにとびあがり」
[2] 〘他サ五(四)〙
※御伽草子・御曹子島渡(室町末)「かんふう川へ御舟をのり出させ給へば」

のり‐い・ず ‥いづ【乗出】

[1] 〘自ダ下二〙 乗物に乗って出て行く。乗ってそこから出かける。のりいだす。のりだす。
※源平盛衰記(14C前)三七「菊地が頸を取、太刀の切鋒に指貫て馬に乗出(ノリイテ)けるが」
[2] 〘他ダ下二〙 (身体、膝などを)前や上の方へ進め出す。のりいだす。のりだす。
※龍潭譚(1896)〈泉鏡花〉九ツ谺「うつくしき人はなかばのりいでたまひて」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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