艤装(読み)ギソウ(その他表記)equipment

翻訳|equipment

デジタル大辞泉 「艤装」の意味・読み・例文・類語

ぎ‐そう〔‐サウ〕【×艤装】

[名](スル)船体が完成したあと就航に必要な種々の装備を船に施すこと。

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精選版 日本国語大辞典 「艤装」の意味・読み・例文・類語

ぎ‐そう‥サウ【艤装】

  1. 〘 名詞 〙 船体ができたあと、航海に必要な各種の装備を整えること。船舶の構造、外観などについて、実際に使用するために必要な改装を施すこと。また、就航までの工事の総称。〔五国対照兵語字書(1881)〕
    1. [初出の実例]「艦船の艤装(ギサウ)、乗員の編成等」(出典:此一戦(1911)〈水野広徳〉一)

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改訂新版 世界大百科事典 「艤装」の意味・わかりやすい解説

艤装 (ぎそう)
equipment

船としての機能を発揮するための装置や設備の総称。これらを装備するための工事(艤装工事)を指すこともある。ただし,水上に浮かびかつ貨物などの容器としての機能をもつ船体の外殻は船殻と呼び,艤装とは区別するのがふつうである。船の建造工事は船殻を造るための船殻工事と艤装のための艤装工事に分けられる。おおまかには船の進水までが船殻工事で,それ以降が艤装工事であるが,現在では船殻は数ブロックに分けてそれを接合していく方法(ブロック建造法)で造られ,艤装工事の中にも進水以前のブロック建造時から並行して行われるものも多い。艤装のための個々の装置は艤装品と呼ばれ,その大半は造船所以外で造られる。

 艤装品をその機能から分けると次のようになる。(1)動かす機能と係留のための機能 動かすための艤装品としては,エンジンとその付属装置からなる機関装置,推進させるためのプロペラ動力をプロペラに伝える軸および操舵装置がおもなものであり,推進以外に船内で消費する電力や蒸気を供給するための発電装置やボイラーも機関装置に含められる。操舵装置はとこれを動かす舵取装置からなり,大型船(全長60m以上)では動力で動く舵取装置を備えることが法的に義務づけられている。このほか,操船のために操舵室や海図室には自動操舵装置レーダー磁気コンパスなどの航海計器が置かれ,さらに海上を安全に航行するための通信装置もある。船の両玄につける赤,緑の玄灯をはじめとする航海灯なども不可欠である。船を係留するための係船装置には,錨を巻き上げるウィンドラス,係船索を巻き取るウィンチなどがある。(2)荷役のための機能 船は貨物を積み込んだりおろしたりするが,このための艤装品としてデリッククレーンがあり,このほかコンテナーを固定する装置,船倉のふたであるハッチなどがある。(3)生活と安全のための機能 航海中は船上で乗員や旅客が生活する。居住室の内装,エアコンディショナーなどの空調装置,給排水装置,照明などのほか,食料の冷蔵,調理などの諸装置もすべて艤装に含まれる。また非常時の人命および船の安全を確保する目的から,救命ボートやいかだなどの救命設備,防火装置,各種の消火装置などについても法律によって装備が義務づけられている。(4)維持のための機能 船を長年月にわたり維持するための艤装品には,通電式の外板防食装置,洗浄用の管装置などがあり,海水の排水装置(ビルジ)のほか燃料をタンクに積み込んだり移送したりする装置なども必要である。これらが艤装を構成するおもなものであるが,船の用途によっては漁船の漁労装置,あるいは軍艦における搭載兵器など特殊な艤装品が加わる。船の建造においては,このような多様で数の多い艤装品を限られた空間に機能的に配置する必要があり,また船上という動揺を受け海水にさらされる特殊な環境においても十分機能を発揮できるよう,艤装品には耐久性や耐食性などが要求される。

 なお,艤装という言葉はもともとは船に対して用いられたものであるが,航空機や自動車などでも諸装備のことを艤装と呼ぶことが多い。
造船
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「艤装」の意味・わかりやすい解説

艤装
ぎそう
equipment

船舶

船体構造の主要部である船殻が完成してから船が就航できるようになるまでの、各種機器、設備、配管、内装などに関する工事の総称である。代表的なものとして、操船関係では操舵(そうだ)装置、係船装置、航海計器、通信装置があり、推進関係では主機関、諸補機関、軸系、プロペラがある。また、貨物に関する荷役装置、貨物倉設備、旅客・乗組員に関する居住設備、交通装置(階段・梯子(はしご)、通路、乗船装置)、安全に関する救命設備、消防・消火設備もある。全体に関するものとして、諸配管装置、通風装置、空気調和装置、諸制御系・電気配線などがある。これらのうち重要な機能、制御・電気系統は、陸上試運転、船内試験および海上試運転によって試験される。

[森田知治]

航空機

船舶と同じように、外殻ができあがった機体に、航空機としての機能や用途を果たすため諸装備・装置を取り付け、調整する作業をいう。すなわち、外殻の組立てと並行して、エンジン、操縦装置、着陸装置、油圧、電気、高圧空気、空調、防除氷、通信・航法装置、および関連する計器類やコンピュータの取付けと調整を行う。旅客機では、さらに客室関係の装備つまり、座席、調理台、コートルーム、手洗所、乗客娯楽装置、非常用装備など、また、軍用機では武装関係の取付け、調整などの作業がある。

 なお、船舶では、艤装の段階から乗務が決められた船で乗組員が工程の立合いや検査を兼ねて訓練を行うのに対し、航空機では、特別なものを除き、装備が複雑、広範囲な割に乗組員が少ないことや機数が多く、仕様が統一されていることから、乗組員は機体の作業とは別に航空機メーカーやユーザーの訓練所で訓練を行い、工程の立合い、検査は専門の検査員が行っている。

[落合一夫]

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百科事典マイペディア 「艤装」の意味・わかりやすい解説

艤装【ぎそう】

船の船殻(せんこく)を除いた運航に必要な一切の設備,またそれらを船殻に取り付ける工事。航行,載貨,荷役などの設備,ならびに居住,通信,停泊,消火などの設備を含む。軍艦の場合は兵装すべてを加える。→造船
→関連項目コンテナー船

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「艤装」の意味・わかりやすい解説

艤装
ぎそう

(1) outfit; equipment 船体と機関だけでも船は動くが,より安全に,より快適に,人なり貨物なりを目的地に運ぶため,船体や機関に取付けられる装備。船を新造するとき,船体が完成して進水すると,次に艤装岸壁につけられ,艤装工事で仕上げをする。 (2) rig 航空機に,動力装置,降着装置,室内装備をはじめ,操縦,電子,空調,予圧,防氷,除氷,滑油,計器などの機器類とその関連部品を装備することをいう。

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