改訂新版 世界大百科事典 「交叉適合試験」の意味・わかりやすい解説
交叉(差)適合試験 (こうさてきごうしけん)
cross match
血液型不適合による輸血の副作用を未然に防ぐために行われる検査。輸血の副作用で最も重篤なのは赤血球不適合輸血によるもので,その原因は赤血球抗体による溶血である。輸血を行う場合,ABO式とRh式のD因子について検査を行い同型のものを選んでいるが,これら以外の血液型がすべて同じであるとは限らない。もし未検査の血液型に関する抗体を患者または供血者がもっていれば,溶血性副作用の危険がある。しかし,このような抗体があっても,患者または供血者赤血球にこれと対応する抗原がなければ溶血反応は起こらない。したがって輸血する前に,患者血清と供血者血球(主試験),供血者血清と患者血球(副試験)を試験管内で実際に混ぜ合わせて凝集または溶血の反応が起こるかどうかをみなければならない。これが交叉適合試験である。この検査で重要なのは主試験で,少しでも反応が陽性であれば,この血液は輸血に適さない。ABO式血液型の異なる血液間で交叉適合試験を行うと,主・副試験いずれかで必ず凝集または溶血が起こるので,この検査はABO式血液型の再確認の意義をもつ。
→血液型
執筆者:湯浅 晋治
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報