溶血(読み)ようけつ

精選版 日本国語大辞典 「溶血」の意味・読み・例文・類語

よう‐けつ【溶血】

〘名〙 赤血球細胞膜がこわれて、中身ヘモグロビンが外にでてくる現象

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「溶血」の意味・読み・例文・類語

よう‐けつ【溶血】

赤血球の膜が破れて、中のヘモグロビンが流出する現象。赤血球と抗体との反応補体が加わることによって生じ、また機械的刺激蛇毒などの化学物質浸透圧低下などで起こる。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

日本大百科全書(ニッポニカ) 「溶血」の意味・わかりやすい解説

溶血
ようけつ

血液中の赤血球が崩壊してヘモグロビンが流出すること。健康人の赤血球は、産生されてから120日経過すると、その代謝が衰弱して寿命が尽きる。そして、両側がへこんだ特有の板状の形が失われ、球状に変化した球状赤血球が、主として脾臓(ひぞう)の中に存在する大貪食(どんしょく)細胞(マクロファージ)にとらえられて破壊される。この際分解されて遊離した鉄、アミノ酸はふたたび利用される。またポルフィリン系物質(ビリベルジン)は間接型ビリルビンとなって肝臓を通り、直接型ビリルビンになって胆汁中に排泄(はいせつ)され、十二指腸に分泌されて脂肪の消化を助けたのち、糞尿(ふんにょう)中に排泄されていく。すなわち、生体内で寿命の尽きた赤血球はマクロファージ内で溶血するが、そのときに分解された物質はすべて再利用される。

 血管から体外に取り出された赤血球は、凝固しないように抗凝固剤を加え等張溶液内に入れておくと、24時間経過してもなお崩壊しないが、低張液内では膨化し、高張液内では萎縮(いしゅく)して崩れ、溶血をおこす。溶血をおこすと、遠心沈殿して得た上澄み中にヘモグロビンが認められる。これを利用して、赤血球の浸透圧抵抗(脆弱(ぜいじゃく)性)の大小を測定することができる。あるいは、溶血テストとして用い、ブドウ糖を添加したうえでの反応で、赤血球における解糖系の異常の有無を知ることもできる。溶血が大量におこると溶血性貧血が発生する。この際には、鉄、アミノ酸は再利用されるが、ビリルビンのほうは過剰になって肝臓で抱合され、胆汁に排泄される量も限界があるために、間接型ビリルビンのままで血中にたまってしまう。これが溶血性黄疸(おうだん)である。この場合、尿中、糞中に大量のウロビリン体がみられるが、ビリルビン尿はみられない。溶血が軽いと、間接型ビリルビンは肝臓で代謝されて黄疸はおこらないし、また貧血も赤血球の産生で補われて発生しない。この場合には赤血球の寿命を測定して決める。

[伊藤健次郎]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

百科事典マイペディア 「溶血」の意味・わかりやすい解説

溶血【ようけつ】

赤血球が崩壊し,膜からヘモグロビンが溶出すること。溶血とともに赤血球浮遊液は赤色が強くなり透明度が増す。免疫学的溶血および物理的・化学的・生物学的溶血に大別できる。免疫学的溶血は抗原抗体反応の一種で,免疫溶血反応と呼ばれる。赤血球と,それを抗原として他種動物に産生させた抗体(溶血素)との結合物に補体が吸着されると溶血を起こすもの。物理的・化学的・生物学的溶血は強い振盪(しんとう),凍結,浮遊液の高張または低張,酸,アルカリ,アルカロイド,溶血性連鎖球菌等の産生する細菌毒素,ヘビ毒などによるもの。体内で溶血が亢進すると溶血性貧血が起こる。
→関連項目サポニン貧血補体結合反応ボルデ

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

世界大百科事典 第2版 「溶血」の意味・わかりやすい解説

ようけつ【溶血 h(a)emolysis】

血液中の赤血球膜がなんらかの原因で穴があいたり,極度の伸展や損傷のため破れ,内部にあるヘモグロビンが流出する現象。生理食塩水等に浮遊させた赤血球の全部が溶けると,不透明で白っぽい赤色を示す浮遊液は赤インキ状の透明な液となり,肉眼的にもよくわかるが,溶血の度合が50~60%以下のときはそのままではわかりにくい。このときでも液を遠心して血球成分を沈殿させると赤色透明の上澄みが得られ,溶血は検出できる。また,この上澄みについて分光光度計を用いてヘモグロビンの量を光学的に測定することにより,溶血の度合を知ることができる。

出典 株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「溶血」の意味・わかりやすい解説

溶血
ようけつ
hemolysis

赤血球が崩壊してヘモグロビンが血球外に溶出する現象。ヘモグロビンは暗赤色をしていて,鉄を含んだ色素のヘムと,蛋白質のグロビンが結合したもので,体内で酸素を運ぶ役目をしている。溶血の起ったことは,不透明な赤血球浮遊液が赤色透明な液に変るので,容易にわかる。溶血には,溶血素の作用による抗原抗体反応の特異的な溶血 (普通これを溶血反応という) と,熱,酸などによる物理的,化学的な原因で起る非特異的な溶血がある。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

栄養・生化学辞典 「溶血」の解説

溶血

 赤血球からヘモグロビンが外へでる状態で,通常は赤血球が破壊されることによって起こる.赤血球の寿命がきた場合,異常な抗原抗体反応.ヘビ毒に接した場合などに起こる.

出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報

世界大百科事典内の溶血の言及

【交叉適合試験(交差適合試験)】より

…血液型不適合による輸血の副作用を未然に防ぐために行われる検査。輸血の副作用で最も重篤なのは赤血球不適合輸血によるもので,その原因は赤血球抗体による溶血である。輸血を行う場合,ABO式とRh式のD因子について検査を行い同型のものを選んでいるが,これら以外の血液型がすべて同じであるとは限らない。…

※「溶血」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について | 情報

今日のキーワード

激甚災害

地震や風雨などによる著しい災害のうち、被災地域や被災者に助成や財政援助を特に必要とするもの。激甚災害法(1962年成立)に基づいて政令で指定される。全国規模で災害そのものを指定する「激甚災害指定基準に...

激甚災害の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android