改訂新版 世界大百科事典 「人工喉頭」の意味・わかりやすい解説
人工喉頭 (じんこうこうとう)
artificial larynx
喉頭摘出手術後の発声に用いる器具。喉頭癌などで喉頭を摘出する手術を受けた場合,食道発声により声を出せるようになるのが望ましいが,3~4割程度の患者ではうまく習得できないことがある。この場合,次善の策として,なんらかの器具を用いて声を出すくふうが行われている。無喉頭者ではふつう気管に穴があいているので,この穴より肺からの呼気を連結管を介して笛部に導き,代用声帯としてのゴム帯を振動させ,この音を口腔内に導いて言葉を発するようにさせる。日本では〈タピアの笛〉として知られている。最近では,肺の呼気を利用せずに,体外より,電気エネルギーを用いて,口腔内に音を導入する方法も行われるようになってきた。口腔内にチューブで音を導くものと,皮膚に振動を与えて間接的に口腔内へ音を導く方法があるが,明りょう度は必ずしも良好ではなく,現在でも種々の改良が試みられている。
→食道発声
執筆者:吉岡 博英
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報