コンピューターにおいて,ハードウェアが実際にもっている物理構造を,適当な変換機構を介在させることにより,プログラムを作成する利用者にとってつごうのよい別の論理構造をもつものとみなせるようにすることを,ごく一般的に仮想化という。この考え方により,特定のハードウェアによって実現されているコンピューターの一般化,共通化が行われている。限られた容量の高速な主記憶装置と大容量の低速の補助記憶装置から構成されて,記憶装置を見かけ上,容量の制限のほとんどない高速の主記憶装置のみから構成されているように仮想化したものを仮想記憶virtual memoryという。コンピューターシステム全体を仮想化したものが仮想機械あるいは仮想計算機と呼ばれる。現在のコンピューターは複数の目的を異にしている利用者が同時に利用できるようになっているシステムが多い。このようなコンピューターにおける仮想化では,各利用者がそれぞれ独立の仮想記憶をもち,入出力装置を含めて別の論理構造のコンピューターを見かけ上もつことができるようになっている。この仮想化のための変換機構としては,オペレーティングシステムと称するソフトウェアがその役割を果たすが,一部ハードウェアやファームウェアも関与する。代表例としては,Multics,IBM VM/370オペレーティングシステムなどがある。
執筆者:大野 豊
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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