記憶装置(読み)きおくそうち(英語表記)memory device
storage device

精選版 日本国語大辞典 「記憶装置」の意味・読み・例文・類語

きおく‐そうち ‥サウチ【記憶装置】

〘名〙 コンピュータの、数値や命令などを記憶する部分。

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デジタル大辞泉 「記憶装置」の意味・読み・例文・類語

きおく‐そうち〔‐サウチ〕【記憶装置】

memoryコンピューターを構成する装置の一つで、プログラムデータを記憶しておく部分。動作が高速で中央処理装置(CPU)が直接読み書きを行う主記憶装置と、大容量で電源を切っても記録内容が保持される補助記憶装置に大別できる。

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改訂新版 世界大百科事典 「記憶装置」の意味・わかりやすい解説

記憶装置 (きおくそうち)
memory device
storage device

コンピューターやデータ通信,各種制御装置などの電子的ディジタルシステムにおいて,情報を処理するために必要なデータや手順などの情報を誤りなく蓄えておき,それらが必要なときに取り出して使用できるようにした装置を記憶装置,またはメモリーと総称する。電子回路で構成されるシステムを他のシステムから特徴づけるもの,システムの能力,機能を決定するのも記憶装置であり,その重要性と進歩発展は顕著である。

 記憶装置は人間の記憶・記録能力を電子的に実現する装置と考えられるが,構造,機能は異なる点が多い。大部分の記憶装置は,記憶する場所(これに一連番号をつけて番地と呼ぶ)を仲介として情報を書込み,読出しする単純な方式を用いている。人間は,内容別や時系列的などに記憶する豊富な機能をもっているが,正確さ,高速さなどでは記憶装置がはるかに優れており,これが積極的に活用されている。とくに動作速度はシステムの性能上限を決めるのでつねに高速化が要求され,最高速のものでは1秒間に1億回(アクセス時間約10ns)以上使えるものもある。

 記憶装置は記憶素子や記録素子の集合体(これらを一括して記憶部品と呼ぶ)とその制御・サポート部分から構成される(図1)。記憶部品は記憶用半導体LSIのようにその内部に電子的番地選択機能をもつものが多い。しかし,大量の情報を経済的に蓄積,保管することを主眼とした記録用部品では,番地選択機能を他の機構的手段によって機能分離して総合経済化を図るものが多く,この場合は記録(録)媒体と呼ばれる。磁気テープや磁気ディスクはその例である。おもな記憶部品・媒体の大略の記憶容量と大きさの例を表に示す。書籍は優れた記憶媒体であるが,電子的操作との親和性は薄く情報蓄積密度も最近の記憶部品に及ばなくなっている。コンピューター第1号であるENIAC(エニアツク)のメモリーは双三極真空管によるフリップフロップ回路を集合したものであった。

 進歩の早いエレクトロニクス技術の中でも,記憶技術の進歩速度は半導体技術とともに最高速である。1983年現在の平均的なメモリーと約40年前のENIACのそれを比較すると,速度はアクセス時間で10μsから0.1μs以下に約2桁,ビット当りの必要電力では6Wから数μW以下に6桁以上,ビット当りの体積では0.3lから10⁻8cm3以下と10桁以上,記憶容量では12桁を超える向上を示している。

 主要な記憶装置や記憶部品の代表的記憶容量とアクセス時間の値を図2に示す。この分布は技術,時代の進展とともに右上方向に移動する。高速なものほど小容量にならざるをえない。この関係は動作原理についてはもちろん,同一材料・原理を用いたものについても同じである。この相反する高速性と大容量化の必然性から,システムの必要とするメモリーを同一動作原理・材料のメモリーですべてまかなうのは実際的,経済的ではない。ある処理過程内の短時間に使用する情報は,互いに関連をもつあまり多くない情報群であることが多い。この性質を利用して,低速大容量のメモリーから適切な時刻に必要部分の情報を高速小容量のメモリーに移し替えて使用して,総合的に全体を高性能・経済化する手段が広く用いられている。これを記憶装置の階層構成,もしくは記憶多重構成と呼ぶ。その概念を図3に示す。図の五つの階層はシステムの大きさにより省略される部分もある。オフラインファイル以下にあるものは,一般に使用頻度が少なく人手操作を伴うものが多い。この人手操作も自動化してオンライン化しようとするものが超大容量記憶装置(マスストレージシステムmass storage system。略してMSS)である。

 主記憶装置は番地指定により演算・制御装置などと直接(場合によっては緩衝記憶装置を介して)情報授受を行うメモリーで内部記憶装置ともいう。従来,磁気コアメモリーが広く,かつ長期間主記憶装置として使用されていたが,現在は半導体集積回路で記憶セルを構成する半導体記憶装置が主流となっている。主記憶装置以外のメモリーは補助記憶装置,もしくは外部記憶装置と呼ばれ,多量の情報を安価に蓄えることを主務とする場合はファイル記憶装置とも呼ばれている。また入出力装置や情報交換媒体としても使用される場合もある。外部(補助)記憶装置は演算・制御装置とは直結せずに主記憶装置との間で情報を授受する。磁気テープ装置磁気ディスク装置フロッピーディスク装置などが一般に使用される。

 代表的大型コンピューターシステムの装置価格構成例を図4に示す。記憶系が過半を占めている。中・小型システムでは相対的に入出力装置が増大しチャンネル・通信系が縮小するが記憶系が主要部であることは変わらない。J.フォン・ノイマンにより蓄積プログラム方式が提案されて以来,記憶装置の重要性は決定的となったが,記憶装置の発達がコンピューターやエレクトロニクスシステムの発達にどれだけ寄与したかを総合的に示しているのが図5である。コンピューターの使用料金と記憶装置価格は四半世紀の間にそれぞれ数千分の1になっているが,価格構成比からメモリーの進歩発展が決定的役割を果たしてきたことが明らかであろう。記憶装置は高性能で安価になるに従いコンピューター以外の分野にも広く利用されるようになっている。すなわちテレビ画像の静止・変速・帯域圧縮などの処理,音声の超高品位蓄積や速度変換,通信情報の蓄積・変換やディジタル信号処理,各種計測器応用や文書作成編集への応用などがそれである。またコンピューターシステムにおいても変化が生じている。すなわちメモリー系諸装置が高価で特性がよくなかった1970年代までは情報処理システムはメモリーにより制限され,メモリー使用の効率化などを中心にシステムが設計されていた。しかし最近はソフトウェア作成・保守費の高騰とメモリーの低価格化が蓄しく,メモリーの使用量が増加してもソフトウェア負担を軽くする方向に変わってきている。

 なお記憶装置に関する用語については用語集を参照されたい。
光学的記憶装置 →磁気記憶装置 →半導体記憶装置

記憶装置のコラム・用語解説

【記憶装置用語】

アーカイバルメモリー archival memory
公文書や歴史的データなど大量の情報を長期的に保存することを目的とした記憶装置。情報の長期蓄積安定性と収納の効率化が追求され,一般に情報の書換えは要求されない。金属薄膜に小孔を電子ビームで開けるものや,写真技術を利用したものなどが研究されているが,決定的なものはまだ開発されておらず,需要も必ずしも顕在化していない。
アクセス時間 access time
記憶装置,もしくは記憶部品を,プログラムから発せられた動作指令によって読み書きできる状態にすることを近接する,もしくは呼び出す,またはアクセスするといい,動作指令を受けてから情報返送開始状態になるまでの時間をアクセス時間,もしくは呼出時間といい,記憶装置・部品の速度性態を示す重要な特性値である。
アナログメモリー analogue memory
アナログ信号を長時間記憶し,この記憶値を非破壊で読み出せるものをいう。1サンプル点を記憶する点メモリー,一次元信号を記憶する波形メモリー,二次元信号を記憶する面メモリーがあり,磁気テープによる従来からの録音,録画は波形メモリーの一種である。記憶・再生の繰返しによる雑音やひずみの増加を本質的に避けられないので,ディジタルメモリーが普及した。最近はA-D変換してディジタル的に記憶し,D-A変換を通して再生する場合も増えている。
揮発性メモリー volatile memory
非持久記憶装置とも呼ばれ,電源が断たれると記憶された情報が消失する記憶装置。フリップフロップ回路を用いた半導体記憶装置や,寄生静電容量の電荷の有無で記憶する動的記憶装置(ダイナミックメモリー)などはその例である。
磁気バブルメモリー magnetic bubble memory
磁性ガーネット薄膜中に生ずる直径1μm程度の安定な円筒形泡状磁区(バブル)の有無で情報を記憶するもので,駆動回転磁界によりパーマロイ薄膜パターンで形成された転送路に沿ってバブルが移動することによって循環形メモリーを形成する。不揮発性の生きたメモリーという利点があるが,動作速度は半導体記憶メモリーと磁気記憶を原理とするメモリーの中間域にあり,周辺記憶装置として使用される。
CCDメモリー charge coupled device memory
半導体記憶素子の一種。転送電極下に形成されるポテンシャル井戸に記憶情報に対応する電荷を蓄積し,転送電極への印加電圧を移動させて,シフトレジスター形のメモリーを構成する。転送される電荷量を自由に設定できるので,アナログメモリーとしても使用できる。MOS形素子のRAMより小型,安価に作れるが循環形メモリーにしかならない。
磁心記憶装置 magnetic core memory
角形ヒステリシス特性をもつフェライト磁心の2方向ある残留磁化の向きを利用する記憶装置で,コアメモリーとも呼ばれ,通常は直径0.5mm程度の小型トロイダル磁心と編線によりマトリックスを構成し,編線の電流一致形選択により情報を書き込む。動作速度は磁心の磁化反転速度で制限され,磁心を編む工数が多いのが欠点であるが,1ビット当り10⁻3cm3くらいの大きさで,ランダムアクセス形であり,かつ不揮発性メモリーで,性能は安定した優れた記憶装置であった。1953年に開発されて以来20年間コンピューターシステムの主記憶はほとんど磁心記憶で構成され,その主流技術であったが,最近は特種用途に限られ,半導体記憶に置き換えられている。
磁性薄膜記憶装置 magnetic thin film memory
磁心記憶装置の欠点を改善するため,種々な技術が開発されたが,その中である程度成功したものが磁性薄膜メモリーである。トロイダル磁心の代りに異方性磁性薄膜を用いるので高速度で動作し,非破壊読出しができ,編組工程はなく生産性もよいが,閉磁路構造をとりにくく,読出電圧が低く雑音に弱いのが欠点である。
周辺記憶装置 peripheral memory
大きな記憶容量が要求されるシステムや,情報記録媒体をそのまま入出力情報荷体として用いたとき,主記憶装置だけでは経済的に,また操作上成立しがたい。そこで入出力装置と同じようにチャンネル装置,もしくはデータバスを通して使用される磁気ディスク,超大容量記憶装置(マスストレージシステム),磁気テープ,磁気カード,磁気バブル,フロッピーディスク,ディジタルカセットテープなどの補助(外部)記憶装置を周辺記憶装置と呼ぶことがある。
ジョセフソンメモリー Josephson memory
超伝導メモリーとも呼ばれ,種々の形式が研究されているが,フラックスシャトル形のものはジョセフソン接合の中に磁束を保持し,その磁束を外部からの制御信号でシフトレジスターと同じように逐次転送する。磁気バブルと似た循環形記憶装置であるが動作時間は数十psと極めて高速であり,消費電力は,10⁻19J/ビット程度ときわめて少なく有望視されているが,まだ実用化はされていない。
動的記憶 dynamic memory
定常状態では情報保持能力がなく,情報に対応する状態,現象が時間とともに減衰する素子を記憶セルとするが,周期的な再書込みなどによって情報を保持するものを動的記憶,もしくはダイナミックメモリーという。3トランジスター形,もしくは1トランジスター形の半導体記憶がその例で,セル構造が簡単になり高集積・経済化できる利点がある。定常状態で情報保持能力のあるものを静的記憶,もしくはスタティックメモリーという。
バッファーメモリー buffer memory
動作速度,データ幅,データ形式,タイミングなどの調整を行うために情報を一時蓄積するもので緩衝記憶装置とも呼ぶ。とくに演算装置の内部にあってきわめて高速度で動作し,主記憶装置の分身として機能するものをキャッシュメモリー,もしくはスクラッチパッドメモリーなどと呼ぶことがある。
非破壊読出し non destructive read out
記憶セルの状態を変化させずに記憶情報を読み出すこと。NDROと略称する。新しい情報を書き込むと保持されていた情報はリセットされるので消去は必要がないが,読出動作により記憶情報が破壊する原理を用いるメモリーもある。この形式のものは必要に応じて直ちに同一情報を再書込みする。磁心記憶装置はその例である。
PROM(ピーロム)(programmable read-only memory)
生きたメモリーの書込みより長時間を要するが,書込動作によって記憶情報を設定できる読出専用記憶装置。情報を書き込むと消去や再書込みのできないヒューズ形,接合破壊形や,紫外線などの照射で消去して再書込みができるFAMOS形,2層ゲート形,電気的に書換えが可能なMNOS形,2層ゲート形などのPROMがある。
不揮発性メモリー non-volatile memory
エネルギーの消費をせずに,すなわち電源が切られても記憶情報を保持できる記憶装置。持久記憶装置とも呼ばれる。磁心(コア)記憶装置,磁気ディスク,磁気テープ記憶装置などはその例である。
プッシュダウン記憶 push down memory
一般に記憶装置は番地(アドレス)を仲介として記憶動作を行うが,これは記憶する時系列的順序のみを仲介とする記憶形式。プッシュダウンスタック,プッシュダウンストア,後入れ先出し方式メモリー,ゼロアドレスメモリーなどとも呼ばれ,サブルーチンへの分岐や復帰などに使用される。ふつうのメモリーをポインター操作で使うことが多い。
ランダムアクセスメモリー random access memory
略してRAM(ラム),等速呼出記憶装置とも呼ばれ,任意の記憶場所にアクセス(呼出し)するときに,記憶場所や呼出順序に無関係にアクセス時間がほぼ一定であるような記憶装置。半導体記憶装置やコアメモリーはその主記憶装置における代表的なものである。補助記憶装置においては磁気テープ装置に対比して磁気ディスク装置をランダムアクセスファイルという。RAMの略称を用いるときはROMに対比して使用される。ROMは一般的に等速呼出し(RAM)になっている。これに対し磁気ドラム,磁気テープ磁気バブル,CCDなどのメモリーは記憶情報や記憶媒体を電子的,もしくは機械的に循環させて記憶しているので,アクセス機構が多数ビットに共用できるので安価に構成できるが,アクセス時間は長くなり,かつ一定とならない。この形式のものを循環呼出記憶装置もしくは循環形メモリーという。
リードオンリーメモリー read-only memory/fixed memory/permanent memory
略してROM(ロム)ともいう。読み書きの機能,動作が対等,かつ自由な記憶を生きた記憶と呼ぶ。書込特性を犠牲にして,情報の保持特性や高速読出性と経済性をねらうものに読出専用記憶,もしくは固定記憶装置とか死んだ記憶と呼ばれるものがある。記憶情報の変更が困難なもの,人手を介して行うもの,命令によって可能となるものなど,いろいろな種類が多数開発使用されている。破壊を防ぐ必要のあるプログラムの収容や,書換え度数の少ない情報の収容などに使用する。一般に不揮発性メモリーで,書込みや消去は専用のオフライン機器が必要となる。
連想記憶装置 associative memory/content-addressed memory/content-addressable memory
略してCAM(カム)ともいう。一般の記憶装置は記憶場所である番地によって記憶情報を読み出すが,情報内容を指定することによって記憶情報を索引,読み出すことのできる記憶装置。番地の代りに参照欄を使用し,その参照情報の一致により読み出す。参照欄も生きたメモリーで自由に変更できる。人間の連想機能,能力とは異次元の簡単な論理機能により実現されている。なお記憶装置全体を連想記憶にすると高価になるので,一部にこの考え方を適用するのがふつうである。
ワイヤメモリー magnetic wire memory
磁性線記憶装置ともいう。磁性薄膜記憶装置の一形態で,直径0.1mm程度の非磁性ワイヤの表面に,円周方向の1軸異方性磁性薄膜を電気メッキ法などで着装した磁性線を語線と直交させ,これをマトリックス状に多数配列して構成する。磁性線と語線の中の各1本に駆動電流を流しその交点部分の磁化を反転して書き込む。記憶セルが閉磁路になりセンス線を兼ねる磁性線との結合もよいので雑音に強いのが特徴である。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「記憶装置」の意味・わかりやすい解説

記憶装置
きおくそうち
storage

コンピュータシステムにおいて、プログラムおよびデータを格納、保持し、取り出すことができる装置。メモリー、ストレージともいう。コンピュータでは、プログラムとデータをともに記憶しておき、順次、プログラムを構成している命令を実行し、データに(場合によっては命令にさえも)操作を施していくことによって、自動的に処理が行われる。そこで、コンピュータにとって記憶装置は必須(ひっす)の構成要素であるといえる。

[土居範久]

分類

記憶装置は高速で、しかも容量が大きいほうが望ましいが、設計上および経済上おのずと限界がある。そこで、一般には、CPU(中央処理装置)で直接アクセス(情報を取り出す)できる記憶装置には、容量は比較的小さいが高価な高速の素子を用いて、実行の際に実際に必要とするプログラムとデータだけを記憶させ、残りは、それに比べて低速ではあるが、安価で容量が大きい記憶装置に記憶させるようにする。前者を主記憶装置(メインメモリー)といい、後者を外部記憶装置という。さらに、主記憶装置も、容量は少ないがより高速な記憶と大容量のそれ程高速でない記憶とで構成することが多い。より高速な記憶をキャッシュメモリーとかバッファメモリーという。この場合、CPUが実際にアクセスするのはキャッシュメモリーである。外部記憶装置に記憶させた内容は、必要に応じてそのつど主記憶装置に転送して使用する。主記憶装置以外の記憶装置を補助記憶装置という。主記憶装置を内部記憶装置、入出力チャネルを通してだけアクセスできる記憶装置を外部記憶装置ということもある。また、インターネットを利用してウェブ上のサーバーにデータを保存することができるオンラインストレージというサービスもある。

[土居範久]

主記憶装置

初期には、超音波を利用した遅延回路や、ブラウン管を用いた静電記憶などがあり、ついで磁気ドラム記憶装置が用いられたが、1950年代の第1世代の後半からは磁気コアがおもに用いられた。

 1970年代のなかば、第3世代後半になって、半導体メモリーsemiconductor memory(ICメモリー)が出現し、磁気コアにとってかわった。半導体メモリーには、読出しや書込みができるRAM(ラム)(random access memory)と、記憶内容の読出ししかできないROM(ロム)(read only memory)がある。

 RAMには、スタティックRAMと、ダイナミックRAMの2種類がある。スタティックRAMはフリップフロップなど順序回路を利用したもので、反対の入力信号があるまでは現在の状態に対応する出力を出し続ける。SRAM(エスラム)ともいう。ダイナミックRAMはコンデンサー(キャパシター)の電荷の有無を利用したもので、時間の経過とともにコンデンサーに蓄積された電荷が失われてしまうので、定期的に電荷を補う。この動作をリフレッシュという。DRAM(ディーラム)ともいう。スタティックRAMのほうが使いやすいが、ダイナミックRAMのほうが構造が簡単であることから安い。RAMは、多少の例外はあるが、一般に電源を切ったら記憶が失われる揮発性メモリーである。

 ROMは電源を切っても記憶が失われない不揮発メモリーで、製造の段階で内容を設定するマスクROM(mask ROM)と、使用者が1回だけ電気的に情報を書き込むことができるPROM(ピーロム)(programmable ROM)、内容を消去しふたたび書き込むことができるEPROM(イーピーロム)(erasable PROM)がある。EPROMは紫外線照射によって消去可能なUV-EPROMと電気的に消去が可能なEEPROM(イーイーピーロム)(electrically erasable and programmable ROM)などがある。EPROMは、近年、フラッシュメモリーにとってかわられつつある。フラッシュメモリーはEEPROMの一種で、書き換え可能な不揮発性メモリーである。フラッシュEEPROMとかフラッシュROMともいう。また、CD-ROMやDVD-ROMなどのように、半導体メモリーでなくても、記憶内容の読出ししかできない補助記憶装置をROMと表現することもある。

 半導体メモリーは128メガビット、256メガビットのものが主流であるが、今後ますます集積度は高まっていくものと思われる。

[土居範久]

外部記憶装置

外部記憶装置としては、普通、磁気ディスク記憶装置、磁気テープ記憶装置(ストリーマー)、フロッピーディスク記憶装置が用いられるが、半導体記憶装置や光磁気記憶装置(MO)なども用いられる。CD-R/RW、USBメモリーなどは外部記憶装置である。

[土居範久]

オンラインストレージ

インターネット上にあるサーバーを使って、自由にデータを読み書きできるサービスをオンラインストレージとよぶ。これは、前項に示した物理的なメディアを使わずに、データを使用中のコンピュータの外部に保管するシステムである。このうち、クラウドサービスを利用して提供されるオンラインストレージをとくにクラウドストレージとよぶ。個人用サービスの代表格であるDropbox(ドロップボックス)やマイクロソフト社のOne Drive(ワンドライブ)、グーグル社のGoogle Drive(グーグルドライブ)など、有償・無償を問わず、さまざまなサービスが提供されている。

[編集部]

『情報処理学会編『新版情報処理ハンドブック』(1995・オーム社)』『アイテック情報技術教育研究所編著『コンピュータシステムの基礎』第13版(2005・アイテック情報処理技術者教育センター)』『志村正道著『コンピュータシステム』(2005・コロナ社)』『デイビッド・A・パターソン、ジョン・L・ヘネシー著、成田光彰訳『コンピュータの構成と設計――ハードウエアとソフトウエアのインタフェース 下』第3版(2006・日経BP社、日経BP出版センター発売)』

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百科事典マイペディア 「記憶装置」の意味・わかりやすい解説

記憶装置【きおくそうち】

コンピューターの構成要素で,数値,データ,命令などをたくわえ,必要なときにそれを利用できるようにした装置。メモリーとも。機械内部ではこれらの情報は二進法による機械語の形をとっているから,記憶装置もまた二値的な状態変化を確実敏速に行い得る記憶素子(たとえば磁気コア)の配列によって構成される。主記憶装置としてコアマトリクスのほか,磁気ドラム磁気ディスク磁気テープ,磁気カードなどが多く用いられ,最近ではワイヤメモリーや集積回路化されたICメモリーなど各種の高性能・高密度のものが開発されている。レジスターのように1語を記憶する簡単なものは別として,一般にはそれぞれの記憶容量(記憶し得る情報のビット数または語数で表す)に応じたアドレスをもち,記憶されるべき語は指定されたアドレスに収容され(書込み),必要に応じてそこから取り出される(読取り)。アドレスを選択する操作を〈呼出し〉といい,計算機本体からアドレスを指定する信号が出てから読取り・書込みの操作が完了するまでの時間を〈呼出し時間〉という。記憶装置の性能は記憶容量と速度(呼出し時間)の両面から評価される。大型コンピューターでは,比較的小容量(ふつう数千語)で高速の内部記憶装置に使用頻度の高いデータやプログラムを収め,低速大容量の外部記憶装置に大量のデータを保存し,必要に応じて内容を移しかえるといった方式が採用されている。→遅延回路
→関連項目磁気バブル磁気録音シーケンシャルアクセス主記憶順序回路ストレージ端末装置フォールトトレランスプログラミングマイクロコンピューターメモリーランダムアクセス

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「記憶装置」の意味・わかりやすい解説

記憶装置
きおくそうち
memory unit; storage unit

コンピュータの構成部分で,データプログラムを記憶する装置。メモリと略称される。主記憶装置 (内部記憶装置) と補助記憶装置 (外部記憶装置) とに分けられる。主記憶装置は,コンピュータ本体が直接アドレスを指定して情報を入力,出力することのできるもので,初期には磁気ドラムが使われたが,1950年頃からは磁心記憶 (コアメモリ) が普通となり,現在では,より高速な読み書きができる集積回路記憶装置 (ICメモリ) が主流となっている。補助記憶装置は,主記憶装置の容量の不足を補うのに用いる大容量,低速の記憶装置で,磁気ドラム,磁気ディスク装置,磁気テープ装置がある。アクセスタイムは ICメモリ,コアメモリ,磁気ドラム,磁気ディスク装置,磁気テープ装置の順に大きくなり,コアメモリで1マイクロ秒以下,磁気ディスクで数十ミリ秒程度であるが,1ビットを記憶するのに必要な単価は上の順の逆に安くなり,また記憶容量の大きいものが得やすくなる。このためコンピュータでは機能と経済性とを考慮した記憶装置が利用されており,これを記憶階層 memory hierarchyという。

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IT用語がわかる辞典 「記憶装置」の解説

きおくそうち【記憶装置】

コンピューターで、データやプログラムを記憶する装置。一時的な記憶に利用され、CPUが直接データの読み書きをする主記憶装置(メインメモリー)と、電源を切っても記憶内容が消去されない補助記憶装置の2種類に分けられる。前者にはRAM(ラム)、後者にはハードディスクが広く使われる。

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ASCII.jpデジタル用語辞典 「記憶装置」の解説

記憶装置

データを記憶するための装置のこと。大きく分けると、主記憶装置と外部記憶装置(補助記憶装置)の2種類がある。主記憶装置は、プログラムを読み込んでCPUと直接やり取りするための装置で、メインメモリーと呼ばれる。メインメモリーは、電源を切ると内容が消えてしまう揮発性メモリーのため、通常、外部記憶装置と併用して使う。

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パソコンで困ったときに開く本 「記憶装置」の解説

記憶装置

データを記録しておく装置の総称で、ハードディスクやCD-ROMなどのほか、電源の入っているあいだだけ記録されているメモリーも含まれます。ただし、英語の「ストレージ」の意味では、メモリーを除く、データを長期的に蓄積、保存する「外部記憶装置」を指します。
⇨CD-ROM、ハードディスク

出典 (株)朝日新聞出版発行「パソコンで困ったときに開く本パソコンで困ったときに開く本について 情報

世界大百科事典(旧版)内の記憶装置の言及

【コンピューター】より

…32ビットや64ビットのデータ(や命令語)を扱うときは,4バイトや8バイトごとにデータを区切って考える――そうしやすいように回路が工夫されている。 主記憶だけでは,大量のデータを扱うことが困難なので,ハードディスク,光磁気ディスク,磁気テープ,フロッピーなどの補助記憶装置を使う。このうち,ハードディスクのように,コンピューターから切り離せないような記憶媒体をもつ装置は,主記憶に対して2次記憶と呼ばれる。…

※「記憶装置」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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