コンピューターのメモリー(主記憶)を,実際に装備されているものより,事実上大きく見せかける,オペレーティングシステム(OS)の機能。
コンピューターの記録装置は高速度で動作し,記憶容量が大きいことが強く要望される。しかし高速で大容量の記憶装置は一般に技術的,経済的に実現困難である。そこで高速度で小(中)容量の主記憶装置と,大容量だが速度は遅い補助記憶装置を,階層的に組み合わせて総合的に効率化,経済化するように構成される。この階層化された記憶システムを使用するとき,プログラマーが高速記憶と大容量記憶の2種の性質と利害得失をつねに意識して,全体の性能が十分発揮されるように階層間のプログラムやデータ群の移動を行うのはたいへんめんどうでもあり,負担も多く,誤りも生じやすい。そこでプログラムが取り扱う記憶装置を,実在の記憶装置と切り離して論理的に大容量の主記憶装置のみで構成されているもの,すなわち仮想アドレス空間としてとらえ,これと実在の記憶装置との対応づけや動作制御は,このために用意した記憶制御装置オペレーティングシステムの助けにより記憶動作を実行するのが仮想記憶である。これにより,主記憶装置のみで構成する場合より記憶動作速度は実効的にやや遅くなるが,実在の主記憶装置の実アドレスよりほとんど無制限といってよいほど広い大容量の仮想アドレスを使用できるようになり,プログラム作成は大幅に効率化される。実在の主記憶装置と補助記憶装置の間では,2~4キロバイト単位の情報がページとかセグメントと名づけられて,プログラマーの介在なしに必要に応じて往復する。
執筆者:川又 晃
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
コンピュータシステムにおいて、主記憶装置の容量よりも多くの容量をプログラムで取り扱うことが可能な記憶システム、またはその機構。仮想メモリ、バーチャルメモリともいう。
コンピュータの記憶装置の記憶容量には物理的な限界がある。そこで、演算装置と直接に情報のやりとりをする主記憶装置には、実行に必要とするプログラムの部分やデータのみを常駐させ、副次的、とりあえず必要としないプログラムの他の部分やデータは大容量の外部記憶に置いて、必要な時点で主記憶に取り込もうとするものである。この考えを推し進めると、演算速度に直接影響を及ぼす情報を、キャッシュメモリーcache memoryとよばれる特別に速度の速い記憶装置に置いたり、外部記憶装置として磁気ディスクのほかに、さらに容量の大きい磁気カードを配したりして、記憶装置を何段階もの階層構造にしたコンピュータシステムをつくることができる。
仮想記憶の考え方が具体化したのは、1970年になって、記憶階層の間のデータの受け渡しをハードウェアの制御で行うようになってからである。このため、命令で取り扱われる記憶位置(アドレス)の範囲、すなわちアドレス空間を実際の主記憶装置の容量を超えた範囲にとることが可能になった。
[小野勝章]
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(星野力 筑波大学名誉教授 / 2007年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
…これをあたかも最大メモリーが実装されているように見せかけるのも資源の抽象化である。これを仮想記憶という。仮想記憶はメモリー実装量の具体値を捨象する。…
※「仮想記憶」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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