山川 世界史小辞典 改訂新版 「伯〔中世ヨーロッパ〕」の解説
伯〔中世ヨーロッパ〕(はく)
comes[ラテン],Graf[ドイツ],comte[フランス]
フランク時代に国家の地方統治の要として,行政,司法,警察,財政,軍事の全権を委ねられた官職で,カロリング朝時代には最多の300の管轄区を数えた。起源は西ローマ帝国末期に主邑都市(civitas)に派遣された統治官たる都市伯(comes civitatis)であり,これがメロヴィング朝に継承され,8世紀の経過中にアウストラシア起源のゲルマン固有の地方統治官であるグラーフ(Graf)制,すなわち地方伯の制度と融合し,フランク時代の伯制度としての完成をみた。カロリング期,特にカール大帝の治世には伯の選任に王権の意向が貫徹し,大帝は自分の家臣団のなかから多くを任命し,地方の直接統治の効果をあげた。6週間おきに開催される定期の裁判集会を主催し,犯罪者を追跡,逮捕し,国王の命令のもとに軍隊を召集して統率した。やがて王権の弱体化にともない自立化の傾向を強め,カロリング国家解体の一因となった。
出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報