佐野源左衛門常世(読み)さのげんざえもんつねよ

改訂新版 世界大百科事典 「佐野源左衛門常世」の意味・わかりやすい解説

佐野源左衛門常世 (さのげんざえもんつねよ)

架空の人名。上野国佐野(現,高崎市)の住人という。謡曲《鉢木》の主人公として名高い。鎌倉幕府の執権北条時頼が出家して最明寺入道となり,旅僧に身をやつして諸国行脚の途中,上野佐野で大雪に遭い,貧家に一夜の宿を借りた。その家のあるじ佐野源左衛門常世はたいせつな鉢の木をいろりにくべて旅僧をもてなしたので,時頼は後日その忠義を賞して彼の領地を復活し,鉢の木に縁のある3ヵ庄を与えた。この話は最明寺入道時頼の回国伝説の一つであるが,上野佐野の時衆が語りひろめたものとみられている。佐野にはいま時衆寺院として涅槃(ねはん)寺と厳浄(ごんじよう)寺の2ヵ寺が存在しており,佐野は信濃善光寺と下野小山新善光寺を結ぶ時衆の遊行コースの上にある。このコースに沿って最明寺入道時頼の回国伝説も語りひろめられたのであろう。
鉢木
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の佐野源左衛門常世の言及

【鉢木】より

…作者不明。シテは佐野源左衛門常世(つねよ)。ある雪の夜,上野(こうずけ)の佐野に着いた旅の僧(ワキ)が,常世の住む貧屋に宿泊を請う。…

※「佐野源左衛門常世」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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