俳諧論書。惟中(いちゆう)著。1675年(延宝3)刊。上下2巻。唐の李澣(りかん)が著した童蒙(子ども)の教科書《蒙求》の名を借り,保守的な貞門俳諧に対し,守武(もりたけ)流(《守武千句》の俳風)を継承する,無心で自由な宗因流の談林俳諧に寓言(ぐうげん)説による論理的裏付けを与え,世の俳人たちの蒙をひらかんとした書。上巻に俳諧の定義,式目観,貞徳著《新増犬筑波(いぬつくば)集》の批判を記し,下巻にそれらを踏まえて談林の秀作と,宗因点の自作の百韻を掲げて,範を示す。俳諧の本質を“虚”とし,無心所着(しよぢやく)の表現をよしとするが,既成の学問を尊しとする保守性もかいま見え,総じては衒学癖があらわで説得力を弱めている。
執筆者:乾 裕幸
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…中国古代の哲学者荘子の寓言論を,〈源氏物語寓言説〉にならって俳諧に適用し,非論理の滑稽を事とする談林俳諧を理論的に裏付けようと試みたもの。主唱者岡西惟中(いちゆう)の《俳諧蒙求(もうぎゆう)》(1675)に,〈大小をみだり,寿夭をたがへ,虚を実にし,実を虚にし,是なるを非とし,非なるを是とする荘子が寓言(略)全く俳諧の俳諧たるなり〉とあり,日常的な価値観の逆転が生み出す滑稽を俳諧の本質とみたらしいが,上記に続けて〈しかあれば,思ふままに大言をなし,かいでまはるほどの偽を言ひ続くるを,この道の骨子と思ふべし〉と述べることからもうかがわれるとおり,惟中の寓言理解は表現の皮相にとどまっていたかに思われる。また寓言説に基づく惟中の俳論は,あまりにも衒学(げんがく)的で,現実への対応に欠ける面が大きかったため,世俗の人情を重んじる西鶴らの俳諧観とは相いれず,やがて確執へと発展した。…
…同年京都から高政(たかまさ)の《絵合(えあわせ)》,大坂から宗因加点の《大坂独吟集》,江戸から松意らの《談林十百韵(とつぴやくいん)》が出され,三都に浸透した談林の勢力をしのばせた。惟中が《俳諧蒙求(もうぎゆう)》を著し,老荘思想を背景に俳諧寓言(ぐうげん)説を展開して新興談林俳諧に理論的裏付けを与え,無心所着(むしんしよぢやく)の効用を力説したのもこの年である。77年には西鶴が1日に1600句を独吟し,矢数(やかず)俳諧の口火を切ったほか,宗因らの《宗因七百韻》,常矩(つねのり)の《蛇之助(じやのすけ)五百韻》,芭蕉らの《桃青(とうせい)三百韻》など,談林系の俳書が続々と刊行された。…
※「俳諧蒙求」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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