日本大百科全書(ニッポニカ) 「偉大なる王」の意味・わかりやすい解説
偉大なる王
いだいなるわん
Великий Ван/Velikiy Van
ロシアの亡命作家N・バイコフの代表作。1936年発表。中国東北(満州)の広大な密林を舞台に「偉大なる王」とよばれる誇り高き虎(とら)の生涯を描いた動物文学。背中に父譲りの「王」「大」の形の模様をもち、密林に君臨している王は、人食い虎と恐れられている。文明社会の発展に伴い密林の動物は追い詰められ、王はますます狂暴になる。王を敬愛し王からも尊敬されている老猟師ツンリーは、自分の身を捧(ささ)げ王を静めようとするが、それより前、自分の妻子を助けようとした王は、ほかの猟師の銃弾に倒れたのだった。世界動物文学の傑作の一つ。
[内田莉莎子]
『和久利誓一訳『偉大なる王』(1969・ポプラ社)』