日本大百科全書(ニッポニカ) 「偽イシドール教令集」の意味・わかりやすい解説
偽イシドール教令集
ぎいしどーるきょうれいしゅう
Pseudo-Isidorian Decretals
セビーリャの司教イシドール(イシドルス)とアフリカ生まれの神学者マリウス・メルカトールとの2人の名を一つにしたイシドール・メルカトールという非実在人物を編者とする偽作の教会法令集。3部からなる。第1部は、クレメンス1世からミルティアデスに至る30人のローマ司教の教令で、すべて偽作。第2部は、325年のニカイア公会議から683年のトレド公会議に至る54公会議議決を収め、大部分真正であるが改竄(かいざん)がなされている。第3部は、シルベステル1世からグレゴリウス2世に至る33人のローマ司教(教皇)の教令を収め、真偽混在している。編纂(へんさん)の目的は、世俗権力や首都大司教、それを背景とする地方教会会議に対し、司教の自由と独立を確保することにあった。847~852年間にメス、ランス、ル・マンのどこかで作成されたらしい。16世紀なかばになって、ルター派の歴史家イリリクスMatthias Flacius Illyricus(1520―75)によりその真偽が明らかにされた。
[今野國雄]