イシドルス(読み)いしどるす(英語表記)Isidorus

日本大百科全書(ニッポニカ) 「イシドルス」の意味・わかりやすい解説

イシドルス
いしどるす
Isidorus
(560ころ―636)

スペインの聖職者。セビーリャ名家に生まれたが、若くして親に死別。修道士の兄レアンデルLeander(?―599/601)のいた修道院で教育を受けたが、この兄は、東方に旅行しコンスタンティノープルでは後の教皇グレゴリウス1世と知己となるなど、広い知見の持ち主で、セビーリャの司教をも務めた。イシドルスもまた600年ごろ兄の後を継いでこの地の司教となり、西ゴート人支配下のスペインでカトリシズムの拡大、ユダヤ教徒の改宗、学校や教会の建設、教会会議の開催に尽力した。その広い学識は生前からよく知られ、著書はさまざまな知識の宝庫として中世を通じて頻繁に利用されたが、とくに『語源論』Etymologiaeは当時の諸学問についての百科全書的情報を提供している。また『命題集3巻』Sententiarum Libri Tresはキリスト教の教義や実践の手引書であり、『教会職務論』De Ecclesiasticis Officisはスペイン教会の典礼と組織についての貴重な資料となっている。史書には『大年代記』Chronica Majoraと『ゴート、バンダルおよびスエビ諸王の歴史Historia regibus Gothorum, Vandalorum et Suevorumがあり、同時代のスペインの不可欠の史料となっている。

[今野國雄 2017年11月17日]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「イシドルス」の意味・わかりやすい解説

イシドルス[セビリア]
Isidorus, Hispalensis

[生]560頃.スペイン,カルタヘナ
[没]636.4.4.
聖人教会博士神学者,歴史家,ヨーロッパ最後の教父。 600年に兄を継ぎセビリアの大司教部下の聖職者の知徳の向上に心を注ぎ,教区学校を整備した。 633年にはトレドのスペイン教会会議を主宰した。その博識のすべてを結集した"Etymologiae"あるいは"Origines"20巻は言語の起源についての非学問的著書であったが,何世紀もの間最も重要な参考書の一つであった。彼はカシオドルスのような前代の百科全書的学者,自由七科,医術,法律,歴史,神学,人類学,動物学,天文学,心理学,建築,農業などの専門家,ラテン著作家などの著書からあらゆる知識を収集した。彼の他の論文も言語,自然科学,天文学など多岐にわたっている。

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