国指定史跡ガイド 「元興寺極楽坊境内」の解説
がんごうじごくらくぼうけいだい【元興寺極楽坊境内】
奈良県奈良市中院町・中新屋町・芝突抜町・昔鳥(かささぎ)町にある寺院。南都七大寺の一つである奈良時代の大寺院、元興寺の旧境内は遺構として重要なことから、1932年(昭和7)に塔跡が、1965年(昭和40)には極楽坊境内と小塔院跡が国の史跡に指定された。極楽坊境内は市内中院町にあり、塔跡の北方に位置する元興寺僧坊の遺構で、東室南階大房と呼ばれる僧坊の一部で礎石が遺存し、本堂と禅室がその上に建てられている。また、小子房の跡も一部存在し、その建物は禅室の南側に移されている。なお、境内の西南隅、禅室の西南方に講堂の基礎地形の東北端部が見出された。元興寺のなかでもこの極楽坊は、浄土信仰の対象とされ、室町時代には独立性を明確にし、室町時代後半の境内図では元興寺とは異なる東向きの寺として描かれている。1998年(平成10)には「古都奈良の文化財」として、世界遺産に登録された。大量に出土した庶民仏教の民俗資料は考古学と民俗学の学術的研究対象となっており、資料館として元興寺総合収蔵庫がある。近畿日本鉄道奈良線近鉄奈良駅から徒歩約15分。