講堂(読み)こうどう

精選版 日本国語大辞典 「講堂」の意味・読み・例文・類語

こう‐どう【講堂】

〘名〙
[一] (コウダウ) 仏語。寺院の建物のうち、経典を講義したり説法したりする堂。本尊を安置し、講師はその前の礼盤で講じ、大衆左右に分かれて聴聞する。ふつう、金堂のうしろに建てられている。
※大安寺伽藍縁起并流記資財帳‐天平一九年(747)「一口講堂長十四丈六尺広九丈二尺柱高一丈七尺」
平家(13C前)一「講堂中堂すべて諸堂一宇ものこさず焼払て」
[二] (カウダウ) 学校、会社などで、多くの人を集めて儀式を行なったり、講義や講演をする建物、または室。〔和英語林集成初版)(1867)〕〔後漢書‐礼儀志上〕

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デジタル大辞泉 「講堂」の意味・読み・例文・類語

こう‐どう【講堂】

(カウダウ) 学校・官庁・会社などで、儀式を行ったり講演や講義などを行ったりする建物または広間。
(コウダウ) 寺院の建物の一。経典の講義や説教をする堂。ふつう金堂の後ろに建てられる。
[類語]会館公会堂ホール議事堂

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「講堂」の意味・わかりやすい解説

講堂
こうどう

経典を講義したり、説法したりする寺院の建物。普通、金堂の後ろに建てられ、禅宗寺院では法堂(はっとう)とよぶ。サンスクリット語ではプラーサーダprāsādaに相当する。実際に講義するときには、本尊を安置し、講師は本尊に向かい、礼盤(らいばん)に座って講じ、大衆は左右に分かれて聴聞(ちょうもん)する。講堂の名は、たとえば『増一阿含経(ぞういちあごんきょう)』第50に、「仏は毗舎離普会(びしゃりふえ)講堂の所にあり、大比丘(びく)衆五百人と倶(とも)なり」とあり、インドにおいてすでに原始仏教時代から存在していたとされる。中国では、『洛陽伽藍記(らくようがらんき)』第1の中に、「梁(りょう)の普泰(ふたい)元年(531)に洛陽建中寺に講堂を設けた」と記されている。日本では、南都北嶺(なんとほくれい)の諸大寺に多くの講堂が建てられたが現存するものは少なく、唐招提寺(とうしょうだいじ)、法隆寺當麻寺(たいまでら)、海竜王寺、広隆寺、書写山円教寺などの講堂は、国宝、国の重要文化財に指定されている。そのうち、唐招提寺と法隆寺の講堂はほとんど同じ構造で、奈良時代の代表的建築である。比叡山(ひえいざん)延暦寺(えんりゃくじ)の大講堂は、学問研究の場として有名で、江戸初期の建築であったが、1956年(昭和31)に焼失した。現在では意味が転じて、学校などで講義や講演を行う建物を講堂というようになった。

[松本史朗]

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改訂新版 世界大百科事典 「講堂」の意味・わかりやすい解説

講堂 (こうどう)

仏教寺院において経法を講じ,法会,儀式を行う主要な堂の一つ。講法堂とも呼ばれ,禅宗寺院では法堂(はつとう)と呼ばれる。古代には金堂や塔のすぐ背後におかれ,多くは正面8間以上の大規模な正面性の強い建築であった。組物は金堂より簡単で平三斗や大斗肘木もあった。内部は中心に小規模な仏壇をおく以外は広い空間とし,寺の大衆参集ができる。仏壇前に二つの高座を対立させ,講師,読師の座とする。現存する講堂では唐招提寺講堂(760ころ)が最古で,法隆寺大講堂(平安時代再建)がこれに次ぐ。なお江戸時代には儒教に基づいてつくられた学校として閑谷黌(しずたにこう)の講堂(18世紀初)がある。現在では,学校や公共施設で集会や講演などを行う大室も講堂という。
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百科事典マイペディア 「講堂」の意味・わかりやすい解説

講堂【こうどう】

おもに仏教寺院の講義,法会のための堂。中国の六朝時代すでにみられ,日本では奈良時代に始まり,唐代の伽藍(がらん)配置にならって金堂の背後に置かれた。法隆寺東院の伝法堂,唐招提寺講堂が当時の遺構。禅宗では法堂(はっとう)という。
→関連項目飛鳥寺式伽藍配置

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「講堂」の意味・わかりやすい解説

講堂
こうどう

(1) 仏教寺院にあり,経を講じ各種の行事を行う建物。金堂の背後にあり法隆寺大講堂はその代表例。多くの僧侶が参集するため金堂より大きく造るが,装飾性は少い。鎌倉時代以後はほとんど造られなくなったが,禅宗で復活し,法堂 (はっとう) として仏殿の背後に造られた。 (2) 学校などで講演や行事などを行う建物。

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普及版 字通 「講堂」の読み・字形・画数・意味

【講堂】こうどう

講舎。

字通「講」の項目を見る

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