経典を講義したり、説法したりする寺院の建物。普通、金堂の後ろに建てられ、禅宗寺院では法堂(はっとう)とよぶ。サンスクリット語ではプラーサーダprāsādaに相当する。実際に講義するときには、本尊を安置し、講師は本尊に向かい、礼盤(らいばん)に座って講じ、大衆は左右に分かれて聴聞(ちょうもん)する。講堂の名は、たとえば『増一阿含経(ぞういちあごんきょう)』第50に、「仏は毗舎離普会(びしゃりふえ)講堂の所にあり、大比丘(びく)衆五百人と倶(とも)なり」とあり、インドにおいてすでに原始仏教時代から存在していたとされる。中国では、『洛陽伽藍記(らくようがらんき)』第1の中に、「梁(りょう)の普泰(ふたい)元年(531)に洛陽建中寺に講堂を設けた」と記されている。日本では、南都北嶺(なんとほくれい)の諸大寺に多くの講堂が建てられたが現存するものは少なく、唐招提寺(とうしょうだいじ)、法隆寺、當麻寺(たいまでら)、海竜王寺、広隆寺、書写山円教寺などの講堂は、国宝、国の重要文化財に指定されている。そのうち、唐招提寺と法隆寺の講堂はほとんど同じ構造で、奈良時代の代表的建築である。比叡山(ひえいざん)延暦寺(えんりゃくじ)の大講堂は、学問研究の場として有名で、江戸初期の建築であったが、1956年(昭和31)に焼失した。現在では意味が転じて、学校などで講義や講演を行う建物を講堂というようになった。
[松本史朗]
仏教寺院において経法を講じ,法会,儀式を行う主要な堂の一つ。講法堂とも呼ばれ,禅宗寺院では法堂(はつとう)と呼ばれる。古代には金堂や塔のすぐ背後におかれ,多くは正面8間以上の大規模な正面性の強い建築であった。組物は金堂より簡単で平三斗や大斗肘木もあった。内部は中心に小規模な仏壇をおく以外は広い空間とし,寺の大衆参集ができる。仏壇前に二つの高座を対立させ,講師,読師の座とする。現存する講堂では唐招提寺講堂(760ころ)が最古で,法隆寺大講堂(平安時代再建)がこれに次ぐ。なお江戸時代には儒教に基づいてつくられた学校として閑谷黌(しずたにこう)の講堂(18世紀初)がある。現在では,学校や公共施設で集会や講演などを行う大室も講堂という。
執筆者:沢村 仁
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