全方位防衛戦略(読み)ぜんほういぼうえいせんりゃく(その他表記)défense tous azimuts; omnidirectional defence

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「全方位防衛戦略」の意味・わかりやすい解説

全方位防衛戦略
ぜんほういぼうえいせんりゃく
défense tous azimuts; omnidirectional defence

フランスの核戦略。 1967年 C.アイユレ参謀総長が提唱し,ドゴール大統領が採用。フランスの仮想敵国は第1次世界大戦後はイギリス,ドイツ,第2次世界大戦後はソ連と変化したが,世界情勢の流動化によってソ連1国に固定すべきでなく,全世界を対象とすべきであり,したがって全世界を射程内に収める ICBMとミサイル潜水艦を保有しなければならない。さらに同盟に加わることは,他国の戦争に巻込まれる危険が高いので,みずからの防衛体制をもって戦争抑止をはかるというもの。ソ連の脅威が減少し,アメリカのいわゆる「核の傘」への不信増大という判断に助けられ,フランスの北大西洋条約機構 NATO脱退を裏づける防衛哲学となった。この背景には,フランスの核武装からフランスが予想した世界的な核拡散があり,自主防衛思想の一つのモデルとなっている。

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