普及版 字通 「兪」の読み・字形・画数・意味


9画

[字音] ユ・シュ
[字訓] いえる・しかり

[説文解字]
[金文]

[字形] 会意
舟と余(よ)。舟は盤、余は手術刀、これで刺して膿漿を盤に移しとる。これによって治癒するので、兪は(癒)の初文。その痛苦が除かれて、心が愉(たの)しく愉(やす)まることをという。兪・(愉)・は一系の字。〔説文〕八下に「中の木もて舟と爲すなり」と刳(く)り舟の意とし、字形を「(しふ)に從ひ、舟に從ひ、(くわい)に從ふ。は水なり」とするが、は膿漿の象。金文の字形によって、字が膿漿を盤に移す意を示すものであることが確かめられる。ゆえに輸送の意となる。金文の〔(そはく)〕に「兪改(ゆかい)すること或(あ)る勿(なか)らん」とあるのは、渝改の意。心渝(がわ)りすることをいう。〔書、尭典〕に「曰く、兪(しか)り」と肯定して答える辞に用いる。

[訓義]
1. いえる、の初文。やすらか。
2. と通じ、ます、すすむ、はなはだ。
3. 古く応答の辞に用いる、しかり。

[古辞書の訓]
名義抄〕兪 イヨイヨ・シカルヲ・マサル・シカリ・シカナリ・タトヒ

[声系]
〔説文〕に兪声として逾・踰・・渝・(輸)など二十五字を収める。おおむね愉悦、また此より彼に移す意をもつ字である。

[語系]
兪・逾・踰・(諭)・喩・jioは同声。逾・踰は此より他に移る、・喩は此を以て他にたとえる意。は他を窺って物を移す意。dokも声に通ずるところがあって、他に流し去る水をいう。兪を古く然諾の意に用いるのは、唯jiuiと声近く、唯は鳥占(とりうら)によって神意を卜し、神の唯諾することをいう。兪はその転音とみてよい。雖siuiも声義近く、唯の鳥占に用いる口(祝の器、(さい))に蠱虫(こちゆう)がつき、神の唯諾に支障のある意で、「雖(いえど)も」という限定がついて、否定の意を含む。兪・唯・雖もまた一系の語である。

[熟語]
兪允兪旨兪咨・兪然・兪兪脈兪兪
[下接語]
允兪・吁兪

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

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