日本大百科全書(ニッポニカ) 「具体詩」の意味・わかりやすい解説
具体詩
ぐたいし
Konkrete Poesie ドイツ語
具象詩ともいう。1944年スイスの工芸家マックス・ビルが「具象」美術展を組織して、具象という概念を打ち出した。ビルの秘書でもあったオイゲン・ゴムリンガーによる、この概念の言語芸術への適用が、ドイツにおける具体(具象)詩の端緒。もっとも、彼の詩誌『シュピラーレ』(1953創刊)とほぼ同じころブラジルでも「ポエシア・コンクレータ」の詩人たちが輩出している。具象とは素材を、それに内在する自律的法則性、質料的機能に即して取り扱うことをいう。詩作の場合、言語は造形素材としての単語に還元される。歴史的、社会的に既成の統辞法、文法、意味論から遊離した単語を視覚的に配列したゴムリンガーの表現法を、ブレーマーなどは一見商業グラフィックに共通した側面をもつ手法にまで推し進め、一方モーンは、語の音声的連鎖、聴覚的連合を追究、ときには単語を分節発音に解離させ、音声と字面の多彩な紋様を制作した。具体詩は国際的な広がりをみせ、60年代には頂点に達した。
[内藤道雄]