冴返・冱返(読み)さえかえる

精選版 日本国語大辞典 「冴返・冱返」の意味・読み・例文・類語

さえ‐かえ・る ‥かへる【冴返・冱返】

〘自ラ五(四)〙
① (光や映像・音などが)非常によく澄む。くっきりとあざやかに見える。澄みきる。
※中華若木詩抄(1520頃)中「寒月雪に映ずる如く、さへかへりてあるに」
② ひどく冷える。寒さが身にしみるほどにきびしい。
※壬二集(1237‐45)「しぐれつる宵のむら雲さへかへり更け行く風にあられ降るなり」
※御湯殿上日記‐大永七年(1527)二月三日「この比さえかへりたる空のしき、けさはのとかになりて」
③ 春になって暖かくなりかけたと思う間もなく、また寒さがぶり返す。余寒がきびしい。《季・春》
※玉葉(1312)春上・二九「さえかへり山風あるる常磐木に降りもたまらぬ春の沫雪〈藤原為家〉」
※車屋本謡曲・竹生島(1570頃)「猶寒(さえ)かへる春の日の」
④ いったん収まっていた勢いが、もとにもどる。ぶりかえす。再返(さいかえ)る。
※宗祇終焉記(1501‐02)「此暮より又わづらふ事さえかへりて」
洒落本・仕懸文庫(1791)二「又さへかへって、にぎやかになり」
⑤ (頭の働きや音色などが)非常にさえる。はっきりする。
浄瑠璃菅原伝授手習鑑(1746)二「八つにもならぬ鳴きの声さへ返る春の夜や」
⑥ 沈滞していた市場活気を帯びて、相場が上がりそうな気配を示す。

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