改訂新版 世界大百科事典 「処女降誕」の意味・わかりやすい解説
処女降誕 (しょじょこうたん)
Virgin Birth
使徒信条のイエスに対する告白の中に述べられている句,〈主は聖霊によりてやどり,処女マリアより生まれ〉の内容を通常〈処女降誕〉と称し,キリスト者の信仰を表すものとされている。しかしこれについて聖書はマタイとルカ両福音書の,いわゆる降誕物語において語っているのみであって,マルコ,ヨハネ,パウロはまったくこれにふれていない。それゆえキリスト者の中にも,これをイエスの十字架と復活への信仰ほどに重大に受けとる必要を認めない者もある。また逆にローマ・カトリック教会の信仰によれば,マリアはイエスの誕生後もずっと生涯処女であったとされ,イエスの兄弟姉妹の存在は否定される。歴史的に見るならば,イエスの処女降誕を証明することは不可能であるが,神の子が具体的に人となる場合これ以外の方法はありえない,との福音書記者の信仰的理解が示されているといえよう。
→処女懐胎 →聖告
執筆者:川村 輝典
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報