マタイ(読み)またい(英語表記)Matthaios

日本大百科全書(ニッポニカ) 「マタイ」の意味・わかりやすい解説

マタイ
またい
Matthaios

イエスの直弟子で、いわゆる十二使徒の1人に数えられている。「マタイ伝福音書(ふくいんしょ)」によれば、このマタイは取税人で、収税所に座っているときにイエスから呼びかけられ、ただちに彼の弟子になった。ところが、「マルコ伝福音書」と「ルカ伝福音書」は、(アルパヨの子)レビについて、同じような召命の場面を描いている。ここから、マタイとレビが同一人物であるかどうかが長い間議論されてきたが、結局、両者を同一視するための決定的根拠はみいだされていない。また、古代教会史家エウセビオスは、使徒マタイがヘブライ語で福音書を書いたという古い伝承を記しているが、近年では、使徒マタイと福音書記者マタイを区別する説のほうが有力である。しかし、両者がまったく無関係であったともいえず、なお問題が残されている。そのほか、マタイの伝道殉教をめぐっても、種々の伝承があるが、その根底に潜む史実は依然として不明である。

土屋 博]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「マタイ」の意味・わかりやすい解説

マタイ
Matthaios; Matthew

キリストの十二使徒の一人。共同訳聖書ではマタイオス,カトリックではマテオ,ギリシア正教会ではマトフェイといわれる。カペナウムの収税吏であったが,キリストに呼ばれてその弟子となる (マタイ福音書9・9) 。古代以来使徒マタイが第1福音書の著者とされたのは,この記事に由来していると思われ,マタイがイエスのロギア (語録。ここではマタイ福音書をさす) を書いたというパピアス (150頃) の証言は信憑性に乏しい。福音書中にも上記以外は使徒リストに名を連ねているだけで,その生涯については伝説以上のことは知られていない。アレクサンドリアクレメンスによれば,キリスト昇天後 12年でパレスチナを離れ,宣教師になったとされるが,宣教地もエチオピアパルチア,ペルシアと伝承により異なる。クレメンスは,彼の死を殉教でなかったというが,東西両教会とも殉教聖人として尊崇している。

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