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分子ガストロノミー ぶんしがすとろのみー Molecular Gastronomy

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知恵蔵2015の解説

分子ガストロノミー

調理による食品の変化を分子レベルで解明し、経験に基づいて伝えられてきた料理の技やコツを科学的に説明しようとする研究分野。ガストロノミーは、美食学や美味学などと訳され、生理的のみならず精神的にも意義を持つ食の営みを研究し、おいしさを作り出す技術を理論的に裏付けることを指す。
分子ガストロノミーを提唱した物理化学者エルベ・ティス博士によると、この研究分野の創設は1980年代。料理の味や見栄えは、加熱の温度や時間、食材の下ごしらえの仕方や調味料を加えるタイミングなどによって左右されるが、上手に作るための料理の決まりごとにはその理由が説明されていないことも多く、迷信も含まれていた。分子ガストロノミーは、調理の条件と食品の化学反応の関係を分子レベルで調べることによって、その作業の意味を明らかにしたり、レシピを改善したりすることを目指している。ティスは当初、この分野の研究をレシピの検証と科学的実験からスタートさせたと言い、フランス料理の伝統的なソース350種の構造を顕微鏡で調べ、23のカテゴリーに分類した。さらに、あらゆる料理が、食材の状態(Gガス、W液体、O油脂、S固体)と、要素がどのような状態でつながっているか(/分散、+併存、⊃包含・結合、σ重層)の、2要素からなる「式」で表せることを指摘した。例えば、生クリームは水に油が分散しているのでO/Wと表せ、それを泡立てると空気を含んだ油が水に散らばっている状態になるので(G+O)/Wと表せる。料理を式に置き換えることで、それを他の食材に応用することも容易になった。フランスの著名なシェフのピエール・ガニェールがティスの研究に協力し、その成果を新たな料理法に取り入れているように、分子ガストロノミーに関心を寄せる料理人も多い。

(原田英美  ライター / 2010年)

出典|(株)朝日新聞出版発行「知恵蔵2015」
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