炭素12の原子1個の質量を正確に12とし、これを基準とした単位で分子の質量を表した数値をいう。以前は酸素分子の分子量を32.0000とする基準が用いられたが、1961年原子量改訂によって炭素12が基準となった。分子を構成している原子の原子量の総和に等しく、厳密にいえば、分子の実在することが確かめられているものについてだけ用いるべきである。たとえば、酸素についてはO2という分子の存在が知られており、その分子量は31.9988である。またベンゼンではC6H6という分子の存在が確かめられており、分子量は78.113である。
これに対して分子の存在しないもの、あるいは共有結合による巨大分子などでは、普通の意味での分子量ということばは使えないが、その化学式についての原子量の総和をとり、化学式量chemical formula weightあるいは式量ということばを用い、これを分子量と同じ意味に使うこともある。たとえば、塩化ナトリウムNaClの結晶では、NaClという分子は存在しないが、その式量
NaCl=22.98977+35.453=58.443
を用いる。
分子量未知の物質は、気体では理想気体の状態式から、また不揮発性物質では溶液をつくり、その溶液の凝固点降下、あるいは沸点上昇などから実験的に概略値を求めることができる。さらに分析によってその物質の実験式を求め、実験式から概略値にあわせた分子式をつくり、その分子式の原子量の総和を正しい分子量の値とすることができる。ただし、分子量の大きい高分子化合物では、光散乱、浸透圧、拡散係数、沈降速度、粘度などを用いて測定することができるが、いろいろな分子の高分子が共存しているために、平均分子量となることが多い。
[中原勝儼]
分子の相対的質量を表す次元のない量で,分子を構成する元素の原子量の総和である。例えば,水素Hの原子量は1.0,酸素Oの原子量は16.0であるから,水H2Oの分子量は1.0×2+16.0=18.0である。実験的には,蒸気の密度,気体の流出,液体中の音速,溶液にしたときの溶媒の凝固点降下あるいは沸点上昇など,分子量と関連する物性の測定から決めることができる。質量スペクトルからは分子イオンの質量数が求まり,X線回折や電子顕微鏡により結晶中で1分子の占める体積を見積もることができれば,それから分子量が求まる。高分子化合物では,特別なものを除けば,分子の大きさは必ずしも均一ではなく,そのため分子量も平均値であるが,溶液の粘性,浸透圧,光散乱,X線や中性子の小角散乱などの測定から,さらに超遠心やゲルクロマトグラフィーなどから決めることができる。
最も正確な分子量は,まず実験的にその構成元素から分子式を決め,その化学式量を算出して求める。
執筆者:佐野 瑞香
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