剣太刀(読み)ツルギタチ

デジタル大辞泉 「剣太刀」の意味・読み・例文・類語

つるぎ‐たち【剣太刀】

[名]鋭利な刀剣。また、単に刀のこと。つるぎのたち。
「ますらをの心振り起こし―腰に取りき」〈・四七八〉
[枕]
を身に添え、またぐところから、「身に添ふ」「ぐ」にかかる。また、を神聖視するところから、「いはふ」にかかる。
「うち鼻ひ鼻をそひつる―身に添ふいもし思ひけらしも」〈・二六三七〉
「―斎ひ祭れる神にしまさば」〈・三二二七〉
剣の刃を「な」というところから「名」「」にかかる。
「―名の惜しけくも我はなし君に逢はずて年の経ぬれば」〈・六一六〉

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「剣太刀」の意味・読み・例文・類語

つるぎ‐たち【剣太刀】

  1. [ 1 ]つるぎ(剣)の太刀
    1. [初出の実例]「大夫(ますらを)の 壮士(をとこ)さびすと 都流伎多智(ツルギタチ) 腰に取り佩き 猟弓(さつゆみ)を 手握り持ちて」(出典:万葉集(8C後)五・八〇四)
  2. [ 2 ]
    1. 剣を扱う動作を表わす語にかかる。
      1. (イ) 「身に添ふ」にかかる。
        1. [初出の実例]「都流伎多知(ツルギタチ)身に添ふ妹をとりみがね哭をそ泣きつる手児(てご)にあらなくに」(出典:万葉集(8C後)一四・三四八五)
      2. (ロ) 「研ぐ」にかかる。
        1. [初出の実例]「劔刀(つるぎたち) 磨ぎし心を 天雲に 思ひはぶらし」(出典:万葉集(8C後)一三・三三二六)
      3. (ハ) 「斎(いは)ふ」にかかる。みがき清める意からか。
        1. [初出の実例]「劔刀(つるぎたち)(いは)ひ祭れる 神にしまさば」(出典:万葉集(8C後)一三・三二二七)
    2. 「名」や「汝(な)」にかかる。刃(な)と同音であるところからか。→補注
      1. [初出の実例]「常世辺に住むべきものを劔刀(つるぎたち)(な)が心からおそやこの君」(出典:万葉集(8C後)九・一七四一)
    3. 皇太子(ひつぎのみこ)」「いはとこわけの命」に続く。かかりかた未詳
      1. [初出の実例]「大虚(おほそら)に呼(よ)ばふこと有りて曰はく、劔刀(ツルキタチ)の太子王(みこ)といふ」(出典:日本書紀(720)履中五年九月(図書寮本訓))

剣太刀の補助注記

のかかり方については、他に、名剣は名を付けて呼ぶ、あるいは銘を刻むところから「名」にかかり、転じて「汝」にかかる、とする説もある。また、「汝」にかかるのではなく、「汝が心」の「心」にかかるとする説もある。この場合のかかり方は、「研ぎし心」から転じたとも、刀の柄にさし込む部分を「心」というところからともする。

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