化学辞典 第2版 「動力学的鎖長」の解説
動力学的鎖長
ドウリキガクテキサチョウ
kinetic chain length
速度論的連鎖長ともいう.成長ラジカルが生成して停止に入るまでの成長過程で反応するモノマー分子の数を動力学的鎖長 という.動力学的鎖長は,連鎖の成長速度 Rp と開始速度 Ri との比で与えられる.すなわち,
である.ここで,Ri は定常状態においては停止速度 Rt に等しいとした.成長および停止の過程が二次反応であるということを用いると,動力学的鎖長はラジカル濃度,したがって重合速度と反比例の関係にあることがわかる.熱開始反応の場合のような二次反応的な連鎖開始による重合においては,動力学的鎖長は濃度に無関係である. が既知であれば,連鎖重合における Ri を求めることができる.ラジカル重合では,停止反応は再結合か不均化で起こるので,動力学的鎖長 は連鎖移動反応が起こらないかぎり,生成重合体の数平均重合度 と次の関係にある.
再結合停止の場合 = 2
不均化停止の場合 =
連鎖移動反応が起これば,これらの関係は成立せず, に比べては小さくなる.一般に,ラジカル重合では少なくとも単量体への連鎖移動反応が無視できないので,厳密にはから を求めることはできない.直接 を求めるためには,適当な位置を 14C でラベルした開始剤を用いて,生成ポリマー中の放射能を定量することなどによって得られる開始速度に関する情報が必要である.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報