日本大百科全書(ニッポニカ) 「南学伝」の意味・わかりやすい解説
南学伝
なんがくでん
土佐(とさ)南学派の儒者大高坂芝山(おおたかさかしざん)によって1691年(元禄4)に著され、土佐南学の源流およびその展開を、その派に属する人々の小伝を通じて示した書物である。この書は「内集 前・後篇(へん)」「外集」の二巻からなり、「内集」には南村梅軒(みなみむらばいけん)、吉良宣経(きらのぶつね)・宣義(のぶよし)、蓮池親実(はすいけちかざね)、谷時中(たにじちゅう)、小倉三省(おぐらさんせい)、野中兼山(けんざん)、付録として尾崎直重(なおしげ)、岡新之(あらゆき)、曽我直之(そがなおゆき)、町定静(まちていせい)らの土佐人が取り上げられ、「外集」には長沢潜軒(せんけん)、山崎闇斎(あんさい)、飯室与五衛門(いいむろよごえもん)、川井与左衛門、米川操軒(よねかわそうけん)、付録として土岐重元(ときしげもと)、荘田琳庵(そうだりんあん)、江木三寿(えきさんじゅ)、三木操之(みきそうし)、松田正則(まさのり)らの非土佐人が取り上げられている。当時は土佐南学派の中絶・四散の時代だったので、芝山はその再興を願って、この『南学伝』の著を書いたのである。
[源 了圓]
『大高坂芝山著『南学伝』(関儀一郎編『日本儒林叢書 第三巻』所収・復刊・1971・鳳出版)』▽『寺石正路著『南学史』(1934・冨山房)』▽『糸賀国次郎著『海南朱子学発達の研究』(1935・成美堂書店)』