化学辞典 第2版 「反転二重項」の解説
反転二重項
ハンテンニジュウコウ
inversion doublet
分子が反転運動によって対掌体に移行しうる場合に見られる振動準位の分裂,ないしはそれにもとづくスペクトル線の分裂をいう.量子力学的なトンネル効果によるもので,古典的には反転が起こらない準位についても分裂は生じる.アンモニア分子に見られる反転二重項はとくによく知られており,振動スペクトルの全対称振動2に約30 cm-1 の分裂が見られるばかりでなく,振動基底状態の0.8 cm-1 の分裂がマイクロ波スペクトルで観測されている.この分裂はビームメーザーの最初の発振に使われた歴史をもつ.そのほか,ヒドラジン,メチルアミン,アニリンにも反転二重項があることが知られている.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報