振動スペクトル(読み)シンドウスペクトル

化学辞典 第2版 「振動スペクトル」の解説

振動スペクトル
シンドウスペクトル
vibration spectrum

分子結晶などの,振動準位間の遷移に起因する光スペクトルを,一般に振動スペクトルという.もっとも一般的には,赤外線吸収スペクトルおよびラマン効果として観測される.それらのスペクトルは,振動数ならびに強度に関して各物質に固有の特徴を備えているので,物質の同定に有用であり,また,分子内の種々の結合原子団が,それらに特有な振動数領域のバンドを与えること,すなわち特性振動数の存在をもとに,分子構造に関する知見が得られる.一方,振動スペクトルを理論的に解析すると分子の基準振動が明らかとなり,分子力場が決定される.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

世界大百科事典(旧版)内の振動スペクトルの言及

【光スペクトル】より

…原子や固体中のイオンの電子状態の間の遷移に対応するスペクトル線はおもに可視から紫外の領域に現れ,励起状態の間の遷移は赤外領域にも現れる。分子が放出または吸収する光のスペクトルは分子スペクトルと呼ばれ,これは,電子状態間の遷移に対応する部分,分子を形成している原子の振動状態の遷移に対応する部分(振動スペクトルという)および分子の回転状態の遷移に対応する部分(回転スペクトル)に分けて考えることができる。このうち,電子遷移に対応するスペクトル線はほとんどが紫外領域に現れ,可視領域に現れることはまれである。…

※「振動スペクトル」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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