トンネル効果(読み)とんねるこうか

日本大百科全書(ニッポニカ) 「トンネル効果」の意味・わかりやすい解説

トンネル効果
とんねるこうか

α(アルファ)崩壊により原子核から放出されるα粒子のエネルギーは、α粒子が外に出るときに超えねばならないポテンシャル・エネルギーの高さよりも小さいことが多い。このようにポテンシャルの高さより低いエネルギーの粒子がポテンシャルを通過する現象トンネル効果という。では、ポテンシャルV(r)のもっとも高い値VMよりエネルギーの低い粒子がポテンシャルを通過していく。このような現象は通常の古典力学法則に従う場合には絶対おこらないことであり、量子力学的な運動に由来する。きわめて薄い金属箔(はく)を光がわずかに透過するのと似ている。透過の割合はポテンシャルと粒子のエネルギーを示す線で囲まれた領域面積によってきわめて敏感に変わる。たとえば、ウランの原子核から420万電子ボルトのα粒子がこのポテンシャルの壁を通過する確率は10-37くらいの確率であるが、これよりも100万電子ボルト高いα粒子であれば確率が5×107も大きくなる。実際のα粒子がウランから飛び出る割合は、α粒子が原子核内で毎秒1021回もポテンシャルの壁と衝突するので、この確率よりずっと大きくなる。半導体や金属面の接触によって生じる電子の流れはトンネル効果による。とくに不純物の多い半導体に負の抵抗が生ずるエサキダイオードジョセフソン効果はトンネル効果の典型的な例である。

田中 一]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「トンネル効果」の意味・わかりやすい解説

トンネル効果
トンネルこうか
tunnel effect

ポテンシャル障壁があるとき,その最高値より小さい運動エネルギーしかもたない粒子でも,その中にしみこんだり,障壁を通り抜けたりすることができるという現象。古典力学では説明できず,量子力学的な考慮が必要である。原子核のα崩壊エサキダイオードジョセフソン効果などはトンネル効果によって説明される。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

今日のキーワード

マイナ保険証

マイナンバーカードを健康保険証として利用できるようにしたもの。マイナポータルなどで利用登録が必要。令和3年(2021)10月から本格運用開始。マイナンバー保険証。マイナンバーカード健康保険証。...

マイナ保険証の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android