トリアゲ(助産)にあたった女性と生児との間に取り結ばれる仮の親子関係における親。その子は取子(とりご)という。職業的な助産婦が一般化する以前は、トリアゲババ、コナサセババなどという手慣れた老女や結婚の世話にあたった妻女などが、出産に立ち会い、「助産」の役割を多く果たした。その際トリアゲにあたった女性を親にたて、生児の将来の世話をも頼むのである。一種の呪術(じゅじゅつ)的な親子関係で、古くは生児の生命力に特殊な影響をもつと考えたのであろう。しかし村々の半職業的な形のトリアゲババの類は実際上も生児と久しく交渉をもち、種々身上相談的な助力をのちのちまで果たしていた。そして職業助産婦の古い人々にも中部山地の村々などには、なおその余風が残っていた。
[竹内利美]
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