日本大百科全書(ニッポニカ) 「口演童話」の意味・わかりやすい解説
口演童話
こうえんどうわ
昔話や児童文学の作品を子供たちに話して聞かせる方法をさす。英語をそのままにストーリー・テリングともいう。児童文化形式の一つで、印刷技術の発達しない時代には子供のための文学の主軸をなしていたが、近代に入ってひとたび衰え、大人たちの教育意識の円熟とともに、子供のための一種の社会教育として盛んとなった。
日本では、封建時代の村社会における語り爺(じ)さ・語り婆(ば)さの伝統を継いで、明治後期に巌谷小波(いわやさざなみ)、久留島武彦(くるしまたけひこ)、岸辺福雄が活躍、第二次世界大戦後は欧米のストーリー・テリングの話法が持ち込まれ、市民層の読書運動の場に広まった。
[上笙一郎]
『内山憲尚編『日本口演童話史』(1972・文化書房博文社)』