改訂新版 世界大百科事典 「合坪」の意味・わかりやすい解説
合坪 (あいつぼ)
〈相坪〉とも書き,〈合(相)坪付〉ともいった。古代末・中世初期,条里制の施行された地域において,1坪(1町)のなかに課役を負わされた田地(免田)がある場合,その残りの部分(免田が1段なら残りの9段)を合坪といい,その部分にも課役が拡大されることがあった。大和興福寺領の進官免田に典型的にみられた方法で,合坪になった作人も〈一味同心〉して課役を務めるのが,〈進官領の習〉であり〈当国平均の習〉とされた。これは進官免田に当てられる田地(公田)の方付(坪付=場所指定)が固定していない,いわゆる浮免(田)の段階における方式であり,条里制が存在する地域で,坪がたんなる区画でなく,耕営や賦課の基準とされたことと密接な関係がある。この合坪は,共同体的な関係を利用しつつ,課役を負う人間や田地を拡大する上での絶好の論理として,興福寺によって主張され,興福寺は大和国内に一円寺領を獲得した。
執筆者:村井 康彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報