呂宋壺(読み)ルソンつぼ

精選版 日本国語大辞典 「呂宋壺」の意味・読み・例文・類語

ルソン‐つぼ【呂宋壺】

〘名〙 南北朝時代から安土桃山時代にかけて南方諸島から渡来した陶製茶壺。当時の貿易船はルソン経由で日本を訪れたため、ルソン製の壺だと考えられていたが、中国南部の安南ベトナム)付近の産と推定される。文祿三年(一五九四)堺の呂宋助左衛門ルソン島から持ち帰って以来、有名になったもの。真壺蓮華王

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「呂宋壺」の意味・わかりやすい解説

呂宋壺
るそんつぼ

正式には呂宋葉茶(はちゃ)壺のこと。抹茶は挽(ひ)いて粉末にするまで葉茶を陶製の壺に入れておくが、この茶壺としてとくに南中国製の黒褐釉(ゆう)陶が好まれ珍重された。中国から呂宋(現フィリピン、ルソン島)に輸出されてあったものを日本の商船がこぞって輸入したため、この名が残ったと考えられる。製品の窯址(ようし)の一つは広東(カントン)省仏山市近郊の石湾(せきわん)に発見され、「蓮華(れんげ)王」印の呂宋壺のほか、政和(1111~18)年号銘の破片が出土し、12世紀にはすでに焼造されていたことが判明している。日本では室町中期の東山時代には「松島」「三日月」などの銘をもつ呂宋壺が名物として不動の価値をもって重宝とされ、その後桃山時代にかけて大流行した。作風から、真壺(まつぼ)、底上げ清香(せいこう)などに分類された。

[矢部良明]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内の呂宋壺の言及

【茶壺】より

…しかし,今ではスズの茶缶の出現もあり,さらに製茶の小売店ですでに粉末にした緑茶を缶に入れて販売しているから,茶壺は単なる〈口切の茶事〉だけに必要な装飾的なものになった。茶壺の中でもフィリピン渡来で〈呂宋(ルソン)壺〉と呼ばれるものが珍重されてきたが,フィリピンの焼物とするのは誤りである。14世紀から15世紀に中国の広東省,福建省一帯などで焼成された壺を〈真壺(まつぼ)〉と呼んで,16世紀に茶の湯が成立すると,名壺には〈松島〉〈三日月〉などの銘も付けられて尊重された。…

※「呂宋壺」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android