精選版 日本国語大辞典 「呂宋壺」の意味・読み・例文・類語
ルソン‐つぼ【呂宋壺】
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正式には呂宋葉茶(はちゃ)壺のこと。抹茶は挽(ひ)いて粉末にするまで葉茶を陶製の壺に入れておくが、この茶壺としてとくに南中国製の黒褐釉(ゆう)陶が好まれ珍重された。中国から呂宋(現フィリピン、ルソン島)に輸出されてあったものを日本の商船がこぞって輸入したため、この名が残ったと考えられる。製品の窯址(ようし)の一つは広東(カントン)省仏山市近郊の石湾(せきわん)に発見され、「蓮華(れんげ)王」印の呂宋壺のほか、政和(1111~18)年号銘の破片が出土し、12世紀にはすでに焼造されていたことが判明している。日本では室町中期の東山時代には「松島」「三日月」などの銘をもつ呂宋壺が名物として不動の価値をもって重宝とされ、その後桃山時代にかけて大流行した。作風から、真壺(まつぼ)、底上げ、清香(せいこう)などに分類された。
[矢部良明]
…しかし,今ではスズの茶缶の出現もあり,さらに製茶の小売店ですでに粉末にした緑茶を缶に入れて販売しているから,茶壺は単なる〈口切の茶事〉だけに必要な装飾的なものになった。茶壺の中でもフィリピン渡来で〈呂宋(ルソン)壺〉と呼ばれるものが珍重されてきたが,フィリピンの焼物とするのは誤りである。14世紀から15世紀に中国の広東省,福建省一帯などで焼成された壺を〈真壺(まつぼ)〉と呼んで,16世紀に茶の湯が成立すると,名壺には〈松島〉〈三日月〉などの銘も付けられて尊重された。…
※「呂宋壺」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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