蓮華(読み)レンゲ

デジタル大辞泉 「蓮華」の意味・読み・例文・類語

れん‐げ【×蓮華/×花】

ハスの花。 夏》一蝶を放ちて―浄土かな/風生
蓮華草れんげそう」の略。
散り蓮華」の略。
[類語]はすはちす睡蓮

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精選版 日本国語大辞典 「蓮華」の意味・読み・例文・類語

れん‐げ【蓮華・蓮花】

  1. 〘 名詞 〙
  2. (はす)の花。れんか。また、蓮。《 季語・夏 》
    1. [初出の実例]「美咲すること、さながら蓮華の開き敷くが如し」(出典:将門記(940頃か))
    2. 「あやしう、蓮華の花ぞのよりといふ人のありつれば」(出典:宇津保物語(970‐999頃)俊蔭)
    3. [その他の文献]〔法華経‐従地踊出品〕
  3. 紋所の名。蓮の花を図案化したもの。立ち蓮華、割り蓮華などがある。
    1. 立ち蓮華@割り蓮華
      立ち蓮華@割り蓮華
  4. れんげざ(蓮華座)」の略。
    1. [初出の実例]「八葉の蓮花のうへに卅七尊ことごとく光をはなちてゐたまへるをみて」(出典:法華修法一百座聞書抄(1110)三月一二日)
  5. 植物「げんげ(翹揺)」の異名。
  6. 指をたとえていう。
    1. [初出の実例]「十のれんげをもみ合はせ、南無や若宮の八幡宮」(出典:御伽草子・大橋の中将(室町時代短篇集所収)(室町末)下)
  7. ( 「ちりれんげ(散蓮華)」の略 ) 汁物などを食するのに用いる陶製の匙(さじ)の類。
    1. [初出の実例]「お銀は柔らかさうな処を、また蓮華で掬ってやった」(出典:黴(1911)〈徳田秋声〉七一)

蓮華の語誌

( について ) 古くはゲンゲの方が優勢であったが、近世中期から次第に「蓮華」「蓮花」の表記でレンゲと呼ぶ例が増えた。現在目にする「紫雲英」の表記は比較的新しく、「日本植物名彙(1884)」に見られる。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「蓮華」の意味・わかりやすい解説

蓮華
れんげ

蓮(はす)の花。仏典では、ウトパラutpala(優鉢羅華(うはつらけ)、青(しょう)蓮華)、パドマpadma(波頭摩華(はずまけ)、紅(ぐ)蓮華)、プンダリーカpurīka(分陀利華(ふんだりけ)、白(びゃく)蓮華)、クムダkumuda(拘物頭華(くもつずけ)、黄(おう)蓮華)を列挙するが、ウトパラは睡蓮(すいれん)で、パドマとプンダリーカが一般に用いられる蓮華である。インドのビシュヌViu神話では、ビシュヌのへその中から生じた蓮華の中にブラフマー(梵天(ぼんてん))がいて万物を創造したという。「泥中(でいちゅう)の蓮華」というように、汚い泥に染まらず清らかで美しい蓮華は、仏典では清浄な姿を仏などに例える。仏・菩薩(ぼさつ)の座る蓮華の台を蓮台(れんだい)、蓮華座(れんげざ)という。『妙法蓮華経』は「白蓮華のように優れた教えを説く経」という意で経題に用いられている。『華厳(けごん)経』では、毘盧遮那仏(びるしゃなぶつ)の世界を蓮華蔵(れんげぞう)世界とよび、仏の住むこの世界を蓮華に例える。阿弥陀(あみだ)の浄土の蓮華の中に往生(おうじょう)することを蓮華化生(れんげけしょう)といい、密教では胎蔵界曼荼羅(たいぞうかいまんだら)の中心に、八弁の蓮華の葉の上に、大日如来(だいにちにょらい)を中央に四仏・四菩薩を周りに配したものを中台八葉院(ちゅうだいはちよういん)とよび、いずれも仏の大悲を表す。煩悩(ぼんのう)の汚れがなく、純粋無垢(むく)で清浄な状態を、仏身や、悟りの世界、浄土などと象徴的なものとして表現した。

[石上善應]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「蓮華」の意味・わかりやすい解説

蓮華
れんげ

ハスの花。種類は多いが,宗教,文芸上では次の5種が代表的である。 (1) パドマ padma 紅蓮華 (ぐれんげ) と訳される。昼に咲く。ヒンドゥー教ではビシュヌ神とその妃ラクシュミー (吉祥天) の象徴。 (2) プンダリーカ puṇḍarīka 白蓮華 (びゃくれんげ) ともいい,ヒマラヤの後方にあってインドを潤すという架空の池に咲くとされる。 (3) ウトパラ utpala 紅,青,黛などの各種の色がある睡蓮のこと。 (4) クムダ kumuda 色は一定しない。樟脳ともいう。 (5) ニーロートパラ nīlotpala 青いウトパラ。青蓮華。以上は植物学的に厳密に分類されたものではない。仏教では特にパドマとプンダリーカとが重要である。蓮華はインドで一般にめでたい花とされ,泥沼から生じるが,しかも濁りに染まらず清く美しく咲くことから,仏教思想の象徴的意義を託されている。

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食器・調理器具がわかる辞典 「蓮華」の解説

れんげ【蓮華】

陶製のくぼみの深いさじ。中華料理などで、大きなものを料理の取り分けに、小型のものをチャーハンやスープ、麺類などに用いる。プラスチックや金属のものもある。◇「ちりれんげ」ともいう。

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普及版 字通 「蓮華」の読み・字形・画数・意味

【蓮華】れんか・れんげ

蓮の花。

字通「蓮」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の蓮華の言及

【文様】より

…輪宝は法(ダルマ)もしくは説法,菩提樹(ぼだいじゆ)は成道(じようどう),仏塔は涅槃(ねはん)を意味していた。漢訳仏典《四分律(しぶんりつ)》によると,仏塔には籐(とう)(唐草)や葡萄蔓(ぶどうまん)(葡萄唐草),蓮華(れんげ)などの植物文様がほどこされていたこともわかる。仏教寺院では,堂塔や尊像などを装飾することを〈荘厳(しようごん)〉というが,これはサンスクリットのビューハvyūhaの漢訳語で,〈飾る〉という意味である。…

※「蓮華」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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