日本大百科全書(ニッポニカ) 「唄とソネット」の意味・わかりやすい解説
唄とソネット
うたとそねっと
Songs and Sonnets
イギリスの詩人ジョン・ダンの代表作。没後、1633年に出版された『詩集』は恋愛詩と宗教詩に大別されるが、前者はさらに「エレジー」と「唄とソネット」の2群に分かれている。いずれもプラトニック・ラブを主題とするペトラルカ以来のルネサンス恋愛詩の伝統をくつがえした近代詩の先駆として高く評価されている。「まれな才色兼備の女でも一度抱いたらミイラにすぎぬ」のようなシニシズム、「きみが涙を流すとき、ぼくの血が一滴一滴流される」と旅の別れを嘆く純愛、「全裸! すべての喜びはここにある」と女をベッドへ促すエロティシズム、「白骨に絡まる金髪の腕輪」の衝撃的イメージなど、多彩な愛の世界である。
[河村錠一郎]
『河村錠一郎訳『エレジー・唄とソネット』(現代思潮社・古典文庫)』